マツダ技報 2020 No.37
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―94―Nnano[ f litcirFecro00](a)50 m/s0 ps(c)120 ps(a)50 m/s0 ps(c)120 ps(b)Adhesion60 psSliding with bond-breaking(b)Non bonds60 psKeeping smooth sliding(a)140120100806040200-20Time [ps]of d-DLC Films and g-DLC Films(a) d-DLC Films and (b) g-DLC Films(b)Dang-ling bondsInterfacial bondsd-DLCHigh friction with adhesionKeeping smooth sliding752550000501/10Ring structures w/o dang-ling bondsKeeping interfaceg-DLC125100000150000200000250000100150Fig. 3 Snapshots of Friction Simulation of d-DLC Films at (a) 0ps, (b) 60ps, and (c) 120psFig. 4 Snapshots of Friction Simulation of g-DLC Films at (a) 0ps, (b) 60ps, and (c) 120psFig. 5 Frictional Forces during the Friction Simulations Fig. 6 Di■erent Mechanisms during Friction of 3.2 DLC膜中の水素が摩擦特性に及ぼす影響 膜中に水素を含むDLC(a-CH)について,膜中の水素が摩擦特性に及ぼす影響を明らかにするために,20%程度の水素を含むDLC膜をモデル化し,3.1節に示すd-DLCとの摩擦プロセスの比較を行った。Fig. 7にa-C Hの摩擦シミュレーションのスナップショットを示す。a-CH同士が接近すると界面にCC結合が形成され凝着が発生する様子が観察された(Fig. 7(b))。その後,界面のCC結合を解離しながら摩擦が進行し,摺動後の表面にはグラファイトの環構造が表面に形成された(Fig. 7(d))。この環構造が摩擦特性に及ぼす影響を明らかにするために,a-CH及びd-DLCを3サイクル繰り返し接触摩擦させる計算を実施した。Fig. 8に3サイクルの摩擦シミュレーションから得られる摩擦力の変化を示す。1サイクル目は,a-CH,d-DLCともに凝着が発生し,CC結合を解離しながらせん断するため摩擦力が増加する。a-CHはd-DLCに比べて低い摩擦力を示す。これは,a-CH表面に存在する水素が表面の未結合手をキャップすることで,界面に形成されるCC結合の数が減少することによるものと考えられる。2サイクル及び3サイクルの摩擦力について,d-DLCは60nN程度と高いが,a-CHは1サイクル目の摩擦力と比べて,摩擦力が大きく低減していることがわかる。この摩擦特性を明らかにするため,各DLC内の炭素原子について,未結合手をもつ炭素(高摩擦に寄与),グラファイト構造の炭素(低摩擦に寄与),ポリマー構造の炭素に分けて,摩擦界面からの深さ方向に対する割合分布を解析した。Fig. 9に各炭素の割合分布を示す。未結合手をもつ炭素原子に関して,を解離するために使われたと考えられる。一方,界面にCC結合を形成しないg-DLCは摩擦力がd-DLCの1/10程度と低く,これはせん断仕事が表面の変形に使われたためと考えられる。以上より,界面の結合形成がDLC摩擦特性に大きく影響を及ぼすことが示された。Fig. 6に水素非含有DLCの摩擦メカニズムを示す。d-DLCの表面には,ダイヤモンドの4面体構造の頂点に未結合手をもっており,界面で未結合手同士が接近するとCC結合が形成される。このCC結合の解離にせん断仕事が使われるため摩擦損失が大きくなる。一方,g-DLCの表面が5員環や6員環の環構造でおおわれており,未結合手が最小化された状態となっているため,界面でのCC結合の形成が抑制され低摩擦を示したと考えられる。以上より,DLCの低摩擦化には摩擦界面にグラファイト構造が存在することが重要であることが示唆された。一方,Pastewkaらよりグラファイト化した表面構造は機械的に脆く接触による摩耗と酸化による摩耗が進行すると示唆されている(8)。このことから,接触部のみグラファイト構造をもち,非接触部は機械的強度の高いd-DLC構造をもっていることが重要であると考えられる。

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