マツダ技報 2020 No.37
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―96―eru ta ]i432100123tnItnIgnsiaercndaoL]-[ ytarepmesine[ t t]-[ ytsineaPMGDGDGDGRedDGreenGDFig. 12 Load Toughness Properties of a-CH and  3.2節において,a-CH膜の繰り返し摩擦により表面が低摩擦なグラファイト構造へ変化することが示唆された。このような,摩擦による原子構造変化を同定するために,ラマン分光法を用いた表面分析の結果をFig. 13に示す。ディスク表面に形成される摺動痕2箇所と非摺動部1箇所について,ラマン分光分析を実施した。非摺動部(a)と摺動部(b)の点に関してはスペクトル形状に有意な差はないが,摺動部(c)の点においては,ID/IG比の値が0.5から0.9へ大きくなり,グラファイト構造の形成が示唆される(9)。また,Gピーク位置が1356cm-1から1393cm-1へ高周波側にシフトする結果となった。崔らはGピーク位置とGピークの半値幅からDLCの分類を行っており,Gピークが高周波側にシフトするとグラファイト構造の特徴を示すとされる(3)。以上より,摺動部(c)ではグラファイト構造の形成が示唆される。摺動部(c)を更に拡大したラマン分光分析の結果をFig. 14に示す。摺動部(c)の白色光像から明るい領域と暗い領域が縞状に存在する様子が確認された。そこで,四角で示す領域でマッピング分析したところ,赤と緑で示す領域で2つの特徴的なラマンスペクトルを得た。緑で示す領域は非摺動部(a)と同様のラマンスペクトルを示すのに対して,赤で示す領域ではシャープなGピークとDピークが現れる結果となった。シャープなピークは結晶化した構造を示しており,高いID/IG比(1.2)及びGピーク位置の高周波側へのシフト(1412cm-1)から,赤で示す領域に結晶化したグラファイト構造が存在することが示唆される。以上より,a-CHの摺動部の一部が摩擦によってグラファイト構造に変化することが実験的にも示され,シミュレーションから明らかにしたa-CHの低摩擦メカニズムの妥当性を示した。また,摺動部の一部のみがグラファイト構造をとっていることから,粗さ突起接触の真実接触部のみグラファイト化している可能性がある。接触部のみ低摩擦なグラファイト化することBettera-C:Hd-DLCSpeed [m/s]d-DLC FilmsRubbed track(b)(c)400 μm2.01.51.0(a)(b)(c)0.50.010001500Raman shift [cm-1]Point PeakRamanshiftIntensityID/IGratio97350.54590268301331793018405(cm-1)152613561530136215521393(a)(b)(c)(a)0.50.9596950250.5Fig. 13 Upper Image Shows Rubbed Track and Points of Raman Spectroscopy Analysis. Middle Figure Shows Raman Spectrums. Lower Table Shows Data of Fig. 14 Upper Image Shows Detailed (c) Point in Rubbed Track and Mapped Analysis Range Separating Green and Red Parts. Middle Figure Shows Raman Spectrums of Green and Red Regions. Lower Table SpectrumsDetailed Fig.13(c) point20 μm1.31.00.5RedGreen0.010001500Raman shift [cm-1]Point PeakRamanshift(cm-1)1582141215281379IntensityID/IGratio1.2Shows Data of Spectrums 耐焼付き特性について,計測した結果をFig. 12に示す。横軸に摺動速度,縦軸にテストピース温度が急激に上昇するときの荷重を示す。d-DLCは耐荷重が0.5MPa以下であるのに対して,a-CHは低速域で3MPa程度の荷重に耐えることができると示された。

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