マツダ技報 2020 No.37
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(2012)(8) L. Pastewka et al.: Anisotropic mechanical (9) H. Okubo et al.: In Situ Raman Observation of the ―97― 河口 健太郎 (1) K. Holmberg et al.: Influence of tribology on global (2) T. Muguruma et al.: Effects of sp2/sp3 Ratio and (6) S. Plimpton: Fast Parallel Algorithms for Short-Range (7) H. M. Aktulga et al.: Parallel reactive molecular energy consumption, costs and emissions, Friction, 5, pp.263-284 (2017)Hydrogen Content on In Vitro Bending and Frictional Performance of DLCCoated Orthodontic Stainless Steels, Coatings, 8, pp.199-210(2018)(3) 崔ほか:ラマン分光法によるDLC膜の機械特性評価および予測(第2報)― 種々の原料ガスを用いてバイポーラPBII&D 法により作成したDLC 膜 ―,トライボロジスト,62巻 3号,pp.228-235(2017)(4) 鈴木ほか:原料の異なる DLC膜のトライボロジー特性,表面科学,25,pp.232-237(2004)(5) J. Jiang et al.: The e■ect of relative humidity on wear of a diamond-like carbon coating, Surface and Coatings Technology, 167, pp.221–225 (2003)Molecular Dynamics, Journal of Computational Physics, Vol.117, pp.1-19 (1995)dynamics: Numerical methods and algorithmic techniques, Parallel Computing, Vol.38, pp.245-259 amorphization drives wear in diamond, Nature Materials, 10, pp.34–38 (2011)Graphitization Process of Tetrahedral Amorphous Carbon Diamond-Like Carbon under Boundary Lubrication in Poly-Alpha-Olefin with an Organic Friction Modifier, Tribology Online, Vol.12 pp.229-237(2017) 4. おわりにで,膜全体の機械的強度は維持しながら低摩擦化が可能と考えられ,内部までグラファイト構造の膜(g-DLC)より耐摩耗性を発現することが示唆される。以上より,内部に高強度なダイヤモンド構造を一部もち,摺動面にはグラファイト構造をもつDLCが,内燃機関の摺動面の摩擦低減及び信頼性確保に有効な構造と考えられる。 内燃機関の摺動面の摩擦低減及び信頼性確保に有効なDLC構造について,原子レベルの摩擦解析と摩擦実験及びラマン分光分析の結果,以下の知見を得た。 (1)水素非含有DLCにおいて,表面に未結合手が存在すると摩擦界面にCC結合が形成する凝着が起こる。このCC結合をせん断により解離しながら摩擦が進行すると高摩擦を示す。ダイヤモンド構造に近いd-DLCは高摩擦化の原因となる未結合手が表面に存在するのに対して,グラファイト構造に近いg-DLCは環構造により未結合手が最小化された表面構造をとる。その結果,g-DLCは低摩擦な特性を示す。 (2)水素含有DLC(a-CH)において,水素原子はDLC表面に存在する未結合手をキャップすることで,強い凝着を抑制する。また,a-CHを繰り返し接触,摩擦することでa-CHの表面構造がグラファイト構造へと変化する原子レベルのなじみが起こり低摩擦化する。グラファイト構造化は接触部の一部で起こるため,a-CHの機械的強度を維持しながら最表面のみ低摩擦構造をとる。■著 者■宮内 勇馬参考文献

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