マツダ技報 2020 No.37
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―99―Fig. 1 Schematics of Combustion Chamber of RCM Table 1に実験条件を示す。燃料はイソオクタンとし,燃焼室に取り付けたインジェクタにより燃焼室内に供給される。燃料混合時間を十分に確保するため,RCM作動10分前に燃料を噴射した。空燃比は30:1である。圧縮速度は,単気筒エンジン換算で約750rpm相当の圧縮速度とした。初期ガス温度及び壁面温度は298K,初期ガス圧力は101.3kPaである。火花点火の一次エネルギーは,100mJに設定し,圧縮開始から25msec.後に放電を行った。Table 1 Experimental Conditions of RCMFuelCompression time (msec.)Air-fuel ratioInitial gas temperature (K)Initial wall temperature (K)Initial gas pressure (kPa)Ignition energy (mJ)2.2 可視化計測手法 高速度カメラを用いて化学発光を撮影することにより,初期火炎核形成過程を観察した。また,シュリーレン撮影法を使用し,初期火炎核により形成される高温部の空間分布を定性的に可視化した。2.3 単気筒エンジン 単気筒エンジンは4ストローク機関であり,行程容積は622cm3,幾何学的圧縮比は20:1,吸気弁閉弁時期における有効圧縮比は12.4:1である。点火プラグはシリンダーボア中心に設置した。Table 2に単気筒エンジン諸元と実験条件をまとめる。Table 2 Engine Specifications and Experimental Engine typeBore (mm)Stroke (mm)Displacement volume (cm3)Geometric Compression ratioEngine speed (rpm)Coolant temperature (deg. C)Lubricant temperature (deg. C)Inlet valve opening timing (deg. BTDC)Inlet valve closing timing (deg. ABDC)Fuel supplyStart of injection (deg. BTDC)FuelAir-fuel ratioIgnition energy (mJ/cycle)3.1 RCM可視化実験結果 Fig. 2にRCM燃焼室の圧力時間履歴を示す。比較のため,非放電時の結果も併せて示す。Fig. 2より,放電の有無による圧力履歴の差異が小さいことがわかる。iso-Octane4030:1298298101.31004-stroke, Single cylinder8910062220:110009090-4787Direct Injection320 (single)Gasoline (91RON)30:1100ConditionsFig. 2 Pressure of RCM2. 実験装置及び実験条件3. 実験結果た研究事例(5)が報告されている。本研究では,通常の火花点火システムにより生成される火炎核を利用し,炭化水素燃料を開裂させることを模擬した計算実験により,希薄予混合気の自着火燃焼促進に関する検討を行った。 本研究では,火炎核形成挙動を観察するための可視化実験と,エンジン環境下での着火時期変化を確認するための性能実験を実施した。前者の可視化実験には,1回のみの圧縮が可能な急速圧縮装置(Rapid Compression Machine,以下RCM)を用い,後者の性能実験には,単気筒エンジンを用いた。以下に用いた実験装置及び計測手法について述べる。2.1 RCM Fig. 1にRCM燃焼室形状を示す。本RCMでは,混合気はピストン上昇により圧縮されるとともに,連通路を通って燃焼室内に流入する。燃焼室形状は,直径約35mm,厚さ17mmの円筒状である。燃焼室両側面に設置した厚さ20mmのサファイアガラス製観測窓により,燃焼室内部の観察を可能としている。ボア及びストロークは,それぞれ89mm,95mmである。圧縮比は,2.3における単気筒エンジンの有効圧縮比と同じ12.4:1 とした。

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