マツダ技報 2020 No.37
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―100― (a)  (b) 4.1 火炎核が未燃混合気に及ぼす影響の計算手法 詳細化学反応計算には,Chemkin Pro(6)を用いた。反応機構として,ガソリンサロゲート反応機構SIPGd1.0(7)にNOXの反応機構を付加したものを用いた。NOXの反応機構にはGRI3.0(8)に含まれる高温NOX反応,及び典型的な低温のNOX反応を用いた。燃料成分として,S5R(レギュラーガソリン相当)(7)を用いて検討を行った。4.2 計算フロー及び条件 RCM可視化実験結果,単気筒エンジン実験結果から,放電を行った条件でのエンジン筒内ではFig 5に示す現象が起こっているものと考えられる。Fig. 5 Estimation Results of Phenomenon in Engine① 点火により希薄混合気中において火炎核が形成される。② 火炎核の周囲混合気が予熱される(以下,予熱混合気)。③ 火炎伝播に至ることなく,火炎核が消炎し予熱混合気は燃焼室内に拡散する。 これらの現象を計算解析により模擬するため,計算フローを以下のとおりとした。(1) 混合気を定容容器内に比較的高温条件で2msec.間保持し,燃料開裂状態を計算(Fig. 6の①)。(2) 上記予熱混合気を6msec.間中に400Kまで線形に降温し,予熱混合気の拡散に伴う冷却過程を計算(Fig. 6の②)。Fig. 4 Heat Release Rate of Single CylinderFig. 3 (a) Chemiluminescence Images, (b) Schlieren Images4. 計算手法 次に,本条件での可視化実験結果をFig. 3に示す。Fig. 3(a)は化学発光撮影結果,(b)はシュリーレン撮影結果である。Fig. 3(a)から放電開始後2msec.までは,点火プラグ付近で強い発光が見られ,放電後8msec.で化学発光が見られなくなった。このことから,希薄混合気中の放電によって火炎核が形成され,火炎伝播に至ることなく放電後8msec.で消炎したと考えられる。更に,気体の密度差をとらえられるシュリーレン撮影結果Fig. 3(b)において,点線で囲んだ部分のように,ゆらいでいる領域は周囲の混合気より高温になっていると考えられる。またFig. 3(a)(b)を比較すると,ゆらいでいる領域は,化学発光領域の外周部であることがわかる。つまり,火炎核はその周囲の混合気に対し,何らかの熱的影響を与えていることがわかった。3.2 単気筒エンジン実験結果 前節のRCMを用いた希薄混合気中の火炎核形成過程の可視化実験結果を受け,単気筒エンジンにて,吸気行程中において放電した際の熱着火挙動の変化について調査した。Fig. 4に熱発生率を示す。放電タイミングは300deg. BTDCである。放電を施した条件では,吸気行程中放電にもかかわらず,質量燃焼割合50%位置が0.5deg.程度進角した。本結果から,放電によって生成した火炎核が,圧縮上死点近傍における自着火へ影響を与えることがわかった。

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