マツダ技報 2020 No.37
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―102―→ H2O2+O2 → H2O2+O2 lO l l0O l]-[2]-[2]-[HOOteK fono�carf eoM2H fono�carf eoM]-[2OH fono�carf eoM2H fono�carf eoMTemp. of HCCI Engine Simulator[K]Temp. of HCCI Engine Simulator[K]700K900K600700800900100011001200Crank Angle[deg.ATDC]700K900K-40-20-300Crank Angle[deg.ATDC]1.5E-071.0E-075.0E-080.0E+00Fig. 9 Mole Fraction of KetOOH vs Temp. of HCCI Fig. 10 Mole Fraction of H2O2 vs Temp. of HCCI Engine 1.0E+001.0E-021.0E-041.0E-061.0E-081.0E-101.0E-12Fig. 11 Mole Fraction of HO2 vs Crank AngleFig. 12 Mole Fraction of H2O2 vs Crank Angle4.0E-043.0E-042.0E-041.0E-040.0E+004.0E-043.0E-042.0E-041.0E-040.0E+00700K900K600700800900100011001200Engine SimulatorSimulator-100-501100K1100K1100K-1010ように予熱された温度環境における主要反応経路の違いが,Fig. 8の1000K近傍における変曲点が存在する要因となっている可能性がある。そこで,予熱温度700K,900K,1100Kに関して更に詳細な分析を行うことにより,着火進角メカニズムについて検討する。 Fig. 9に,エンジンモデルにおける圧縮行程中の燃焼室内温度変化に対するKetOOH濃度変化を示す。予熱温度700Kの条件では,燃焼室内温度が800K以上で,KetOOH濃度が上昇するが,予熱温度900K,1100Kの条件では,通常低温酸化反応が活発ではないと考えられる燃焼室内温度800K以下においてもKetOOH濃度の上昇が見られる。これから,予熱温度900K,1100Kの条件では,少量混合した予熱混合気により燃焼室内における低温酸化反応が促進されている可能性がある。 次にこれについて分析を行う。Fig. 10に燃焼室内温度変化に対するH2O2濃度の変化を示す。H2O2濃度が上昇し始める温度は,予熱温度1100Kの条件が最も低く,700K,900Kの条件はほぼ同等になっている。これから,予熱温度1100Kの条件は,他の条件に対しH2O2 chemistryに関わる化学種の初期濃度が高いことが示唆される。そこで,燃焼室内温度900Kのタイミングにおいて,H2O2の生成速度が大きい素反応を抽出した。その結果,予熱温度700K,900Kでは C6H5CH3+HO2 → C6H5CH2+H2O2 (1) nC7H16+HO2 → nC7H15+H2O2 (2) iC8H18+HO2 → (3)iC8H17+H2O2  cC7H14+HO2 → cC7H13+H2O2 (4) 2HO2 (5)の順でH2O2の生成速度が大きく,1100Kでは C6H5CH3+HO2 → C6H5CH2+H2O2 (1) nC7H16+HO2 → nC7H15+H2O2 (2) 2HO2 (5) iC8H18+HO2 → (3)iC8H17+H2O2  cC7H14+HO2 → cC7H13+H2O2 (4)の順であり,いずれの素反応にもHO2が含まれていることがわかった。また,予熱温度1100Kの条件では,その他の条件と素反応の序列が異なり,式(5)のH2O2生成速度が上位になっている。すなわち,HO2は燃料成分と反応するより,それ自身が反応してH2O2を生成する方が優位になるほど,HO2濃度が高いことを示唆しており,更に,この素反応の序列の違いが,Fig. 10に示すように,予熱温度1100Kがその他の条件に比べ低温でH2O2濃度が上昇する,つまりH2O2 chemistryが早期化する要因と考えられる。 HO2は低温酸化反応域では温度に対し指数関数的に生成速度が増加し,H2O2 chemistry領域以降は生成速度が緩やかになることが知られている。エンジンモデルの初期混合気中のHO2濃度を確認しても,予熱温度1100K> 900K>>700Kの序列どおりになっており(Fig. 11参照),HO2の温度に対する振る舞いがエンジンモデルの初期混合気中のHO2濃度の序列に表れている。また,上記素反応式(1)~(4)は初期燃料成分からHを引き抜く反応,すなわち低温酸化反応の起点となる反応である。Fig. 9において予熱温度1100Kの条件では,最も低温酸化反応が促進されていることを述べたが,これはエンジンモデルの初期HO2濃度が高いことによるものと考えられる。 予熱温度900Kの条件は,燃焼室内温度の変化に対す

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