マツダ技報 2020 No.37
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葛 唽遥 ―103―(1) マツダ:アニュアルレポート2019,https://www.library/annual/files/mazdaar19all_j.pdf(2019)(2) 高橋 栄一,小島 宏一,山口 誠也:予混合気の非平衡プラズマ放電による着火制御,第51 回燃焼シンポジウム講演論文集,p.148,講演番号E133(2013)(3) 小野 拓磨,高橋 栄一,西岡 牧人:メタン予混合気への誘電体バリア放電プラズマ照射による着火及び燃焼促進機構の検討,第52 回燃焼シンポジウム講演論文集,p.534,講演番号D341(2014)(4) 小野 拓磨,高橋 栄一,西岡 牧人:液体燃料予混合気へのDBD プラズマ照射による圧縮着火特性への影響,第52 回燃焼シンポジウム講演論文集,講演番号E114(2015)(5) 三好 明:燃焼の自由度を高めるための基礎検討,第28回内燃シンポジウム講演論文集,講演番号99(2017)(6) CHEMKINPRO 2019R2, ANSYS, San Diego, 2019(7) 三好 明,酒井 康行:ガソリンサロゲート詳細反応機構の構築,自動車技術会論文集 48巻5号,p.1021-1026(2017)(8) M. Frenklac,h N. W. Moriart,y B. Eiteneer, M. 大野 諒平 沖濱 圭佑 るH2O2濃度の変化が予熱温度700Kの条件と同等である。一方,Fig. 12のクランク角に対するH2O2濃度変化をみると,予熱温度900Kの条件は700Kの条件より早くH2O2濃度が上昇している。つまり,予熱温度900Kの条件は,低温酸化反応が促進されたことにより燃焼室内温度が上昇し,H2O2 chemistryが早期化したと考えられる。 以上から,Fig. 7で示した予熱混合気添加による自着火時期の進角効果は,HO2濃度を用いて次のように説明できる。 まず,低温酸化反応領域の温度帯にて予熱された混合気は予熱温度に応じた濃度のHO2を生成する。生成されたHO2が,予熱されていない混合気の低温酸化反応を活性化し,自着火時期を早期化する。一方,およそ1000K以上に予熱された混合気は予熱温度に応じてHO2濃度は高まるものの,HO2濃度の温度感度は小さく,予熱温度に対する進角効果も鈍化する。したがって,進角効果は予熱温度1000K近傍で変曲点をもつ。 また,進角効果へのHO2の作用はその濃度に依存して異なり,比較的高濃度(およそ予熱温度1000K以上)では低温酸化反応とH2O2 chemistryの両方を促進させるのに対し,低濃度(予熱温度1000K未満)では低温酸化反応のみ促進させていると考えられる。5. おわりにmazda.com/globalassets/ja/assets/investors/Goldenberg, C.T. Bowman, R. K. Hanson, S. Song, W. C. Gardiner Jr., V. V.Lissianski, G. P. Smith, D. M. Golden, and Z. Qin, Gri mech 3.0 http://www.me.berkeley.edu/gri-mech/(参照2016-03-23)(9) 安東 弘光,酒井 康行,桑原 一成:プラズマ支援燃焼の化学反応メカニズム:プラズマサポートによる着火遅れ短縮の可能性,プラズマ・核融合学会誌,89(4), p.220-224(2013) 火炎核を利用し,炭化水素燃料を開裂させることを模擬した計算実験により,希薄予混合気の自着火燃焼促進に関する検討を行った。その結果,以下の知見を得た。(1) 低温低圧場にて,通常の火花点火システムを用いて空燃比30:1の混合気に放電を行うと,火炎核が形成されたのち消炎する様子についてRCMを用いて確認した。(2) 単気筒エンジンにて,通常の点火システムを用いて吸気行程中に放電を行うと,火炎伝播せず後の圧縮自着火が促進されることを確認した。(3) 詳細化学反応計算より,予熱混合気の燃料成分は一部開裂しており,冷却後にもradical等が存在することが示唆された。(4) 予熱混合気の温度が高いほど,着火時期進角量は大きい。ただし,進角効果は予熱温度1000K近傍で変曲点を持ち,およそ1000K以上では鈍化する。(5) 進角の要因は,混合気が予熱されることにより生成されるHO2である。進角効果が1000K近傍で鈍化するのは,炭化水素燃料の温度環境における主反応経路の違いにより,HO2生成速度も1000K近傍で鈍化するためである。(6) HO2の進角効果への作用は濃度によって異なり,比較的高濃度の場合は,低温酸化反応並びにH2O2 chemistryを促進し,低濃度の場合は低温酸化反応のみを促進する。■著 者■藤本 英史大澤 駿 原田 雄司 参考文献

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