マツダ技報 2020 No.37
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―8―2.1 深化した魂動デザイン 2010年から始まったマツダのデザイン・テーマ『魂動』は,ブランド価値を向上させる大きな原動力となった。そして2017年のコンセプトカーVISION COUPEでは,魂動デザインをアートのレベルに引き上げるべく更に深化させ,新たなステージへと踏み出した。深化した魂動デザインが目指すのは,日本の美意識を礎とした新たなエレガンスである。「引き算の美学」のもとに,一筋の強い動きである「反り」,余計な要素を削ぎ落とした「余白」,光りと影のゆらめきを映し込む「移ろい」の3つの要素で,より自然な生命感を体現した(Fig. 1)。Fig. 1 Three Factors of Japanese Beauty2.2 デザイン・コンセプト『Sleek & Bold』 この考え方のもと,コンパクト・クロスオーバーSUVとしての新たなデザインを創造したのがCX30である。『Sleek & Bold』をデザイン・コンセプトとし,伸びやかな美しさとSUVらしい力強さが融合したプロポーション,一瞬ごとに変化する豊かな表情を見せるボディサーフェース,包まれ感と抜け感が鮮やかに対比し全ての乗員が一体感と居心地のよさを感じられる上質なインテリアを創造した。これらにより,見るたび触れるたびに感性が刺激される,このクルマならではの価値と個性を磨き上げた。3.1 パッケージとプロポーションのブレークスルー CX30は居住性などのパッケージを一切妥協すること無く,伸びやかな美しさを追求するという高い目標を掲Fig. 2 Slim Body ProportionFig. 3 Roomy and Fast CabinFig. 4 Wide Stance from Back View2. デザイン・コンセプト3. エクステリア・デザインロポーションを実現すべく,デザイナーとエンジニアの垣根を超えブレークスルーを目指し,チーム一丸となって創り上げた。その流れるようなフォルムや心地よく質感高いインテリアは,見る者が息をのむアート作品のような,類い稀な美しさを表現した。 お客様の感性がこのクルマの美しさに共鳴し,より創造的な自分になることで,アートと毎日をともに過ごす豊かな人生を送って欲しいと考えた。げた。しかしこのクラスのクロスオーバーSUVは,全長が短く背が高いクルマゆえにずんぐりとしたプロポーションになってしまうため,伸びやかに見せることは極めて困難であった。しかし何としてでも克服しようとチャレンジし,3つのブレークスルーによりそれを果たした。 ① ボディー下部を幅広の黒いクラッディング(樹脂ガーニッシュ)でブラック・アウトすることで,残ったボディー・カラー部がスリムで伸びやかに見える視覚的効果をねらった。同時にクラッディングによってSUVらしい力強さと安心感も表現(Fig. 2)。 ② 後席の頭上空間を確保したままDピラーを寝かせることによる,居住性とクーペのような流麗さを両立したキャビン(Fig. 3)。 ③ キャビンから一気に張り出すリア・フェンダーと,妖艶で幅広いくびれの造形によるワイド・スタンスでスポーティーな後ろ姿(Fig. 4)。 これらをまとめたデザイン・コンセプトを『Sleek & Bold』とし,伸びやかなクーペの美しさと,大胆なSUVの力強さを併せ持ったデザインとした。3.2 デザイン・テーマ「溜めと払い」 深化した魂動デザインの要素である「余白」「反り」「移ろい」のもとに,ボディー全体で前進感を表現するた

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