マツダ技報 2020 No.37
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(2)ホィールの回転手法の影響 ホィール回転手法の違いがタイヤ前圧力とホィール開口部で流入出する流れに及ぼす影響を確認した。ホィールの剛体回転運動を考慮したCase4は,Case3に比べタイヤ前圧力が上昇し(Fig. 9),実測値からの乖離が大きくなる。一方で,ホィール開口上部やホィールアーチ隙への流入量については,実測値に近づいている(Fig. 10, 11)。これら変化の要因を理解するために,CFDの流れ場を分析した(Fig. 12)。ホィールの剛体回転有無により,ホィールスポーク部の風向が大きく変化していることが分かる。これはホィールの回転運動により主流がせん断されるためであり,せん断された流れの一部が開口内に流入すると考えられる。またその流入に誘起されてホィールアーチ後端からの流入も増加する。この流入はタイヤハウス内の圧力を高め,先に述べたタイヤ前圧力の上昇につながっていると推測する。以上より,もう一つの中間特性であるタイヤ側面開口部の流入量の再現精度を向上するにはホィール回転運動の再現が重要であるといえる。ただし,ホィール開口下部については実測値とCFD結果の差が大きく,精度向上は今後の課題となる。―22―Cpave=0.34 (a) Wind tunnel test Cpave=0.51 (b) CFD Case1 (Non-deformed)Cpave=0.38 (c) CFD Case2 (deformed) Cpave=0.36 (d) CFD Case3 (with pattern)(a) CFD Case1 (Non-deformed) (b) CFD Case2 (deformed) No data∫Cvyds=8.3×10-3(※only inward direction)∫Cvyds=1.1×10-3(※only inward direction)Fig. 8 Velocity Magnitude of Y Direction on (Blue: Inward Direction, Red: Outward Direction)∫Cvyds=6.6×10-4(※only inward direction)∫Cvyds=2.2×10-4(※only inward direction)Wheel Opening Wind tunnel testCFD(case1)CFD(case2) CFD(case3)High PressureSmall RadiusThe Area of Contact Patch is LargeMiddle PressureLarge RadiusThe Area of Contact Patch is SmallLow PressureFlow through Treads(c)CFD Case3 (with pattern) Fig. 6 Pressure in Front of Tire Measured by WT Test and CFDFig. 7 Image of Flow Structure and Flow Stream Line Bottom of Tireを再現することで,接地部の面積が減り,ショルダ部の曲率が大きくなったことで流れが側面に受け流されやすくなったためである(Fig. 6, 7)。また,Case3はCase2より更に,タイヤ前圧力が低くなっている。これはタイヤの縦溝と地面の間の空隙を風が通気するためである(Fig. 6, 7)。いずれもタイヤ形状の再現度を高めることで実測値に近づいており,中間特性の一つであるタイヤ前圧力の再現精度を高めるにはタイヤ接地部の断面形状と,タイヤの縦溝と地面の空隙部の通気の再現が重要であるといえる。 次にもう一つの中間特性である,式(3)より求めたホィール開口部で流入出する流れについて及ぼす影響を検証した(Fig. 8)。赤い部分はホィール開口部からの流出量が大きいことを示し,青い部分は反対に流入量が大きいことを示している。ホィール開口の上部に着目すると風洞での実測の場合はホィールへの流入方向の流れが支配的であるが,CFDで求めた結果Case1~3のいずれも流出方向の流れが支配的であり実測と逆である。このことから,タイヤ形状の再現精度を高めるだけでは回転を伴うホィール開口の再現精度を向上することは難しいと考えられる。

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