マツダ技報 2020 No.37
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―24―∫KEdsvvSection BSection A0.0720.067Upper0.0690.054Lower Section ASection BWithout rotationSection BSection A0.0720.0660.0760.067Section ASection BWith rotation∫Keds=0.021Wind directionθy=12.7[deg.]Fig. 15 Flow Streamline and Kinetic Energy Fig. 16 Image of Flow Structure around Tire with 4.3 ボディーの存在が風のエネルギー損失に及ぼす 次に,簡易車両モデルを用いてボディーの存在が風の運動エネルギーに及ぼす影響を調査した。タイヤ単体の状態に比べ,ボディーが存在することで,タイヤ側部のエネルギーが低下することが分かる(Fig. 17)。この要因はボディーを取り付けた場合,タイヤ前の入力風向が主流に対してタイヤ外側に向かって曲がることにある(Fig. 18)。入力風の曲がりが大きくなることでタイヤ外側では,風がタイヤショルダから遠ざかる方向に流れることで剥離が誘発され,タイヤ内側ではタイヤ後部に風が巻き込むように流れる。その結果,タイヤ後部ではタイヤ内と外の風向差が大きくなりタイヤ背面の混合渦を強める(Fig. 19)。従って,タイヤ前の左右方向の風向を制御し,主流に対する風の曲がりを小さくできればタイヤ側部と背面における風のエネルギー損失を低減できると考えられる。Beside TireRotationFig. 18 Flow Structure around Tire with BodyFig. 19 Image of Flow Structure around Tire with Body4.4 タイヤ下部の渦を低減する制御コンセプトと具 前節までに,タイヤ前の入力風向を制御することでタイヤ周りのエネルギー損失量を低減する考え方を示した。具体的には左右方向の風の曲がりを最小化しつつ,タイヤの回転方向と入力風向が一致するタイヤ下部に風を導風すればよい。本節ではこれを実現するための具体構造について言及する。デザインや車両レイアウトに制約がなければ,バンパーの外端位置や曲率などを制御因子として,ねらいの方向に風を導くことは可能である。しかし,この手法ではタイヤをバンパーから露出させたいデザインコンセプトを実現することは難しい。そこで,私たちはバンパー下部に小さく目立たないアタッチメント部品(デフレクタ)を取り付けることで風向を制御し,デザイン自由度を高める取り組みを行った。 前世代SUV群では平板型のデフレクタ構造を採用し,タイヤへ当たる風を減らして,ホィールハウス内への風の流入を抑制することで,タイヤ上部の渦を低減していた。しかし,この構造ではデフレクタ表面で急激な圧力上昇を伴い,タイヤ直前で風が左右に大きく曲がってしまうため,タイヤ前での風向制御が難しい。そこで,私たちは3次元的なスロープ構造を着想し,バンパー下端から徐々に風を曲げることで,ねらいの風向制御を実現する形状を導出した(Fig. 20)。更なる部品小型化のためにデフレクタの基本形状だけでなく,風を利用した風向制御を検討した。具体的には,デフレクタ内に一度風を取り込み,背面からねらいの方向に風を排出することで,基本形状を小型化しても風向制御機能を維持できるといFig. 17 Kinetic Energy Beside TireOutside air flowInside air flowAir flow behind tirerωradiusrAngular velocity ωrω∫Keds=0.025(a)Without body (b)With body Wind directionθy=0.0[deg.]にくいタイヤ下部へ風を導風すれば風のエネルギー損失を低減できると考えられる。影響体構造

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