マツダ技報 2020 No.37
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④ ロール運動とピッチ運動を決定するロール軸 バネ上のロール運動やピッチ運動はロール軸の設定に依存する。ロール軸はフロントとリアのサスペンションのリンク配置により決定する特性で,路面からの入力の大きさと位相を制御する。このリンク配置とロール剛性を制御因子とした。(2)バネ上運動における同体質化 バネ上の運動は路面入力により発生する上下運動,操舵により発生するピッチ運動やロール運動を起こす。これらの運動が連成する一定の関係について同体質を定義した。例として操舵初期におけるピッチ運動とロール運動の連成を示す(Fig. 3)。―28―esnopseResnopseRdna reetS 123Lateral ForceLongitudinal ForceBall JointSteeringTieRodFrontside bushingFront Rear side bushing2.4 同体質性能を実現する制御因子 ダイナミクス性能の同体質化に向け,各システム,ユニットの特性を検証し,制御因子を明らかにした。① 頭部の動きを安定させるシート特性(1) 着座時でも立位(歩行時)に近くなるよう骨盤を立たせること,バランス保持能力が発揮できるよう脊柱に自然なS字カーブを描かせることで,乗員がバネ上運動を正確に把握できる優れたシート特性が実現できる。これから座面,シートバックの体圧分布など,人体の支持特性を制御因子とした。② 入力伝達に遅れがなく振動を減衰させるボディー特性 フロントサスペンションからの入力をリアサスペンションへ遅れなく伝達する高剛性な車体骨格特性と振動エネルギーを減衰させて乗員へ伝える伝達特性を制御因子とした。③ タイヤの動きを安定させるサスペンション支持特性(1) 路面からのさまざまな方向への入力に対して,ロアアーム前側ブッシュをピボット化して,タイヤの位置決め機能を強化した。タイヤへ横力や前後力が入力した時,前側ブッシュを中心にロアアームが回転運動することで,連続したコンプライアンス特性となり,車両運動を安定させる。この特性を制御因子とした(Fig. 4)。Fig. 4 Stable Tire Position against Input ForcePhase DifferentialConstant Phase LagPitch Motion Before RollSteering AngleVehicle MotionTimeYawLat.Acc.Relation of Roll and Pitch MotionRoll(x10)SteerPitch(x100)Fig. 3 Pitch and Roll RelationTimeFig. 1 Concept of Road Input Force Control2.3 ダイナミクス性能の同体質 人間特性を基にダイナミクス性能が同じと感じられる車両特性を平面運動とバネ上運動で定義した。(1)平面運動における同体質化 ①操舵特性に関する定義で,日常の走行条件における操舵力の差が±1N以下であることを同体質とした。 ②車両応答に関する定義で,操舵に対するヨー応答と横向き加速度の発生タイミングを適切にすることが重要で,その位相遅れの関係がある一定以内であることを同体質とした(Fig. 2)。Fig. 2 Yaw and Lateral G Phase Lag against Steer121086420-21.52.50.50.30.1-0.1コンセプトとそれを具現化する技術を開発した。2.2 人の特性に関する開発コンセプト 一般的に,人は頭部の動きが安定すれば,快適な乗り心地性能を感じることができることは知られている。運転操作中でも人の頭部の動きを安定させることを開発のコンセプトとした。路面からの入力で発生する力が,人体へ伝わるまでの経路の中で頭部の動きを不連続にする要素を洗い出し,それらを連続的な動きに変換して,頭部の動きを安定させる(Fig. 1)。

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