マツダ技報 2020 No.37
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(2)ピッチ運動とロール運動の連成の考え方 操舵時にロール運動とともに発生するピッチ運動は,フロントのロール剛性アップでフロント旋回外輪の沈み込みが抑えられ,ピッチ運動は減少する。 この変化に対し,リアのロールセンター高を上げ,ロール剛性をMAZDA3と同等にしたことで,リアの旋回内輪によるジャッキアップを利用してピッチ運動を誘起し,同体質なピッチ運動を実現した。 これらロール運動とピッチ運動の連成を指標に,ロール軸と前後のロール剛性配分を決定する検証をCAE解析で行い,MAZDA3と同体質なバネ上運動を導いた。―31―noitareeccA l Ietar gnisaercnBack and Forth Acc. Fig. 16 Floor Acceleration against Road InputFig. 17 Acceleration Increasing RateCenter of GravityFig. 18 Center of Gravity and Front Roll Center Height 一方,リアのトーション・ビーム・アクスル式サスペンション(TBA式:車軸懸架)は,フロントのマク40mm↑Fig. 19 Rear Torsion Beam Fixing Point (Side View) リアのロールセンター高を上げた結果,CX30のロール軸はMAZDA3のロール軸に対して前傾となった(Fig. 20)。 この変化によるフロントのロールモーメントの増加は,制御因子であるフロントのロール剛性を10%アップさせて,同体質なロール運動を実現した。Fig. 20 Roll Center Axis Inclination (Side View)New CX-30Mazda340mm UPRoll Moment ArmRoll CenterNew CX-30Back and ForthFloor Acceleration against InputAcceleration increasing rateTo UpUps and Downs Acc.Same InclinationTo BackTimeCenter of GravityNewCX-30MAZDA340mm UPBlue: New CX-30Red: Mazda3New CX-30 TBA Fixing PointTBAMazda3 PointTBA:Torsion Beam AxleRear TireWCNew CX-30Roll AxisMazda3Roll AxisMAZDA3PreviousUps and DownsRoll Moment= C.G. x Acc.x Roll Moment Arm※C.G.:Center of Gravity※Acc.:Lateral Acceleration※Roll Moment Arm Length4. ダイナミクス性能の達成状況続した入力と上下運動を感じることができる(Fig. 16,Fig. 17)。 更にMAZDA3と同傾にしたロアアーム下反角は,ロール運動時のジャッキアップの増加が抑制でき,フロントの旋回内輪が浮くロール姿勢を改善した。3.4 ロール,ピッチを連成させるロール軸とロール ロール運動とピッチ運動が連成して滑らかに発生するように,MAZDA3からロール軸と前後ロール剛性配分を再考した。(1)ロール運動とロール軸の考え方 ロアアームの下反角は,ロール運動時の回転中心となるロール軸の高さ,すなわちロールセンター高を決定する。同体質なロール運動の実現は,重心高アップと同等にロールセンター高を上げ,ロールモーメントを等価にする必要がある。しかし,同体質な上下運動の実現のためにMAZDA3と下反角を同傾にした結果,フロントのロールモーメントは増加した(Fig. 18)。剛性ファーソン・ストラット式サスペンションと異なり,ロールセンター高はTBAサスペンションのボディー取り付け点の高さに依存する。そのため取り付け点を重心高アップと同等の40mm引き上げ,リアのロールモーメントを等価にした(Fig. 19)。 試験車両の実走試験においても,操舵初期にピッチ運動が発生し,その後にロール運動が連成して発生するバネ上運動が実現できた(Fig. 21)。 ロール運動とピッチ運動の連成は,同体質の定義で定めたターゲットを達成している(Fig. 22)。

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