MAZDA3とCX30に採用した新世代i-ACTIV AWDシステムでは,次のふたつの提供価値の更なる向上を目指して,ハードウエアとソフトウエアの両方においてさまざまな機能を進化させた(Fig. 1)。 (1)さまざまな路面で安全に走行できるダイナミクス性能 (2)実用域で2WD車に迫る低燃費―34―Fig. 1 Evolution of AWD2.1 理想の車両挙動へ タイヤは,垂直荷重が掛かることでより高いグリップを発揮することができる。「新世代 i-ACTIV AWD」はこの原理を活用し,さまざまな走行シーンにおいて4つのタイヤに効率的に仕事をさせるため,クルマの前後方向の荷重移動をドライバーの操作やGセンサーの情報などから推定。前後荷重状態に応じて,前輪・後輪の荷重が掛かった方へ積極的にトルクを配分する。 これを実現するため,減速~旋回~加速と時々刻々変化する車両運動状態と,ブレーキやステアリング,アクセルによるドライバーの操作意図をモニターしながら,瞬時に前後のトルク配分を変化させることで前後タイヤの負荷バランスを最適化する。すなわち,前後輪のタイヤ摩擦円状態を推定し,タイヤ力のキャパシティを最大化する前後トルク配分コントロールによって,人馬一体のダイナミクス性能と高効率な低燃費性能を両立するのが新世代i-ACTIV AWDの技術コンセプトである。2.2 加減速時のAWDトルク配分 加速時は,アクセル操作や前後Gから推定した車両後方への荷重移動に応じて後輪のトルク配分を増加し,前輪のタイヤ負荷を低減。タイヤスリップが発生するずっと手前から前後輪のタイヤ力の路面伝達効率の最大化をFig. 2 AWD Torque Ratio at Acceleration2.3 旋回時のAWDトルク配分 旋回時は,ターンインのタイミング,すなわちドライバーがハンドルを切り足している間は,曲がりやすさを優先するため,GVCのエンジントルク制御による荷重移動効果を優先し,AWDはその瞬間の前後トルク配分を保持。定常旋回に至るまでには,車両のヨー運動の強度に応じて後輪へのトルク配分を増やしていくことで,前輪のタイヤ横力マージンを確保してアンダーステアの発生を防ぎつつ,後述のサスペンションジオメトリーとの相乗効果を活用して旋回姿勢の安定化を実現した(Fig. 3, 4)。Fig. 3 AWD Torque Ratio at TurnFig. 4 Cooperative Control with GVC2.進化のコンセプト輪の荷重状態を最適化して操舵応答性を改善する「Gベクタリングコントロール(GVC)」とAWDの協調システムを構築し,曲がりやすさと安定性をさらに高次元で両立。SUVであるCX30には,悪路走破性を飛躍的に向上する「オフロード・トラクション・アシスト」を搭載し,より幅広いシーンでの「人馬一体」感を提供する。狙って制御する。減速時には前輪への配分を増加させ,垂直荷重が減少した後輪のタイヤ負荷を低減し,タックイン挙動も含めた減速姿勢の安定化に貢献する。 高速走行時には,路面にうねりのある高速道路などでも安心して走行できるよう,車速の増加に応じて後輪へのトルク配分を増加させ,前後輪の拘束力を強化することで直進安定性を高める(Fig. 2)。
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