マツダ技報 2020 No.37
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―35―2.4 サスペンションジオメトリーとの相乗効果 MAZDA3とCX30からは,新世代車体構造技術であるSKYACTIV VEHICLE ARCHITECTUREを採用。前輪駆動2WDとAWD用のプラットフォームで,リヤサスペンションにはトーションビームアクスル(TBA)を採用する。AWDではこのTBAの取付角を活用し,後輪トルク付加によるアンチスコット効果によって加速時の車体後部の沈み込みを抑制。安定した加速姿勢を実現する。 旋回時には後輪トルク増加によってピッチ姿勢変化を抑制し,ドライバーが感じるロール感を穏やかに改善する。具体的には,アクセル一定で走行した場合,前輪が減速してアンチダイブ効果,後輪が増速となってアンチスコット効果が発生し,前後の車体の支えが強化されることでピッチ姿勢を安定する(Fig. 5)。またTBAの特徴として駆動力の増減に対するタイヤのトー角変化が少ないため,旋回加速シーンにおいても限界挙動が予測しやすいというメリットがある。Fig. 5 Image of Stabilizing E■ect in Vehicle Pitching 新旧のi-ACTIV AWDで旋回時の操舵応答性を比較した結果をFig. 6に示す。GVCとAWDの協調制御により,ゼロ舵角から切り込み時のアンダーステアが低減し,よりスムースな旋回挙動を実現。ハンドルを戻す際のヨー挙動の収束性も改善し,よりリニアリティの高いハンドリング性能を実現した。Fig. 6 Comparison Result of Steering Response between Previous and New SystemFig. 7 New Generation i-ACTIV AWD on Snowy Road2.5 悪路走破性の向上 SUVモデルのCX30では,悪路でのスタック脱出性を高める「オフロード・トラクション・アシスト」を新規に開発,採用した(Fig. 8)。AWDシステムとトラクション・コントロール・システム(TCS)が協調し,オフロードやぬかるみ,深雪,わだち等の悪路における走破性とコントロール性を高め,「悪路でも人馬一体」を実現する。 オフロード・トラクション・アシスト作動時には,AWDはスリップする前から後輪トルクを最大化し,4輪のタイヤのグリップポテンシャルを向上。対角輪のスリップをはじめとするスタック状態をモニターし,悪路で地面から浮いて空転する輪に対しては通常よりも強いTCSのブレーキ介入によって駆動力の抜けを抑えることで,接地輪側へ駆動力を確実に伝達する(Fig. 9)。Fig. 8 Operation SW and Meter DisplayFig. 9 System Diagram of O■-Road Traction Assist この機能によって,悪路においてもタイヤのグリップを余すことなく使い切ることが可能となり,ドライバーがスリップを緻密にコントロールしながら積極的にアクセルを踏んで走破することが可能となった(Fig. 10)。 以上の相乗効果によって,ドライ,ウェットにかかわらずさまざまな路面環境で高効率かつ意のままのダイナミクス性能を実現した。不安定になりやすい雪上においても,安定した車両挙動と自在なコントロール性を提供する(Fig. 7)。

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