マツダ技報 2020 No.37
49/138

―42―Fig. 7 Monitoring of Autonomous Driving Condition試験期間を短縮するために市場での一般的な使われ方よりシビアな車速や条件を組み合わせ自動運転装置による耐久試験方法ならではの工夫を入れて構成した。Fig. 8 Rough Road Test Course4.1 走行車速制御 耐久試験中の走行車速は,一発大荷重的な入力を避けて市場における一般的な走行車速から大きく外さずに構成する必要がある。しかし,市場の走行車速は,低速から高速までさまざまである。悪路では低速時の小さい入力は,ショックアブソーバーで吸収されやすく車体への入力は小さい。逆に車速を上げると入力は吸収されにくいため車体への入力が大きくなる。この現象に着目しFig. 9に示す走行例のように,一般的なお客様の走行状態からシミュレートした加減速の走行パターンと一定速の走行パターンを組み合わせシャシーと車体の入力負荷のバランスをとった設定で運用する。Fig. 9 Example of Vehicle Speed PatternFig. 10 Speed Accuracy of Autonomous Driving Device 車両を加速させたい区間は,現在車速と目標車速の差に対するアクセルストロークの上下限を設定,更に車両の速度維持に必要なストロークと調整幅を5段階まで規定する。このチューニングによって緩加速と急加速をコントロールする。また悪路走行中のブレーキ操作の加減でアクスルと周辺部品には前後方向の入力負荷が変化する。そして,エンジンマウントラバーの取り付け部分にも前後方向の入力負荷に変動がある。これらの入力負荷条件の設定もドライバーの運転では,経験やスキルの差によって操作のタイミングとポイントが一定にならない。自動運転装置は,反復の運転操作に対する精度が高いため加減速による入力負荷を凹凸路面200m区間の中で制御する走行方法が可能になった。4.2 走行ライン制御 耐久試験は,使用するコースを周回数で管理して定期的に車両点検やデータ計測,積載条件の変更を行い運用する。走行車速と積載条件の変更による入力負荷の変動は,走行ラインの違いによっても悪路からの入力と車体ロールによるねじりの入力が変化することになる。更に走行車速に応じてコーナー進入から出口までの走行ラインのトレース性は,耐久試験結果の安定性に影響を及ぼすことになる。この調整は,自動運転させたいコース上の位置情報と速度を設定して制御する。ドライバーが運転時に行う「認知・判断・操作」をシステムに制御させるようにトライ&エラーの走行をデータロガーで収集して変化代の確認と調整を繰り返しノウハウとして習得し 設定した走行車速は,耐久試験の負荷をコントロールする上で重要な要因になる。しかし,ドライバーの運転では,長時間の走行になるほど基準の車速±2km/hを維持することが困難になるため走行車速のばらつきを少なくするように車速の変化が少ない単調な走行方法を設定していた。そのためにドライバーが運転する限りは,居眠り運転や判断ミスの危険性がゼロにはならずに残っていた。自動運転装置による走行はGPS測位による位置と速度の情報をベースにコントロールユニットが1秒間に50回のトラッキング制御を行う。ユニットメーカーの公表値によると車速誤差は±0.5km/hである。制御パラメーターをコースでチューニングすることで悪路の連続走行でも目標車速に対する誤差は1km/h以内で周回することが可能になった(Fig. 10)。

元のページ  ../index.html#49

このブックを見る