マツダ技報 2020 No.37
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(1)中島祥好(九州大学 2020年3月退官):耳と心 (2)岩宮眞一郎(九州大学):よくわかる最新音響の基―49― 服部 之総 森田 洋明 4.2 検証結果 エンジンサウンドのあり,なしの2仕様にて,時間軸に対して,繰り返し計測の中での最大速度差を縦軸に取り比較を行った(Fig. 8)。 エンジンサウンドが発生している仕様は,発生していない仕様に比べて速度ばらつきが低減していることが分かる。大きいところでは5km/h程度速度差が縮まっている。これは目標速度の約10%程度に相当しており,ばらつき低減後は,速度ばらつきは5%(2~3km/h)程度になり,メーター誤差程度の差となってくるため,同じ道を,同じように安定して運転できていることといえる。Fig. 7 Evaluation CourseFig. 8 Evaluation Result of Variation in Vehicle Speed 今回の考えのようにドライバーが直接コントロールしている原動機の状態を音で伝えることで,今の原動機の生できるようにした車両を用いて,社内テストコースで評価を実施した。ドライバーは1名とし,検証内容は,上記の考えを基にしたエンジンサウンドが発生する状態と,エンジンサウンドが発生しない状態の2仕様とした。各仕様,複数回走行し,一定区間の走行速度ばらつきを計測することで,運転精度の差を検証することとした。なお車速については,各ポイントに表示されている車速をねらうこととし,評価の間,車速計は隠し見えないようにして行った。 評価区間は,加速・減速・定常を包含しているテストコース内のひとつのコーナー区間を評価対象区間とした(Fig. 7)。光永 誠介原田 聖士 白石 秀宗状態,次の車両挙動の予見精度が上がり,運転操作の精度向上につながり,今回のように速度ばらつきを低減できる結果につながったと考える。5.おわりに これまでエンジンサウンド開発は,音だけの観点からどのような音色にするかを中心に開発を続けてきた。しかし,そもそも人は音とどのように関わっているのかから検討を進め,意のままに運転するために必要な情報を考察し,結びつけることで安心・快適からもう一歩進化した意のままに操れることに貢献し,走る歓びの提供につながるエンジンサウンド構想を構築することができた。 この考えを基にしたトルクの変化を伝えるサウンドは,今後の新型車から順次適用を予定している。 今回の成果を起点に今後,更に研究を拡張させ,ドライバーにとって意のままに操れる車となり,同乗者に安心・快適を感じてもらえる商品の実現に貢献していく。(聴覚心理学入門)本と仕組み■著 者■参考文献

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