マツダ技報 2020 No.37
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―59―Fig. 5 APMC Process FlowFig. 6 Technology Roadmap for MBD (APMC)Fig. 7 Cylinder Head Casting Dimension In-Process-OutFig. 8 Mechanism of Sand Mold Heat Deformation5. シリンダーヘッド素材寸法の課題これまで,生産効率を高める項目から着実にモデル化・実用化し,手戻りのない量産準備を行っている。将来的には,製品機能モデルなどに生産モデルを組み合わせて,更なる製品機能向上までを視野に入れて活動を進めていく。その中でC/H素材寸法モデルはFig. 6の赤枠内の右上に位置し,中子熱変形モデルやアルミ残留応力モデルなどとつながっている。 Fig. 7は,C/H素材寸法モデルを簡略したIPOで整理したものである。最終的なC/H寸法をCAEで正確に予測するためには,各工程の寸法を正しく計算し,つないでいく必要がある。本稿では,赤枠で示す中子熱変形モデルの事例を報告する。 中子熱変形とは高温の溶湯の熱影響により中子が局所的に大きく変形する現象である。素材の寸法精度を高めるには,この熱変形の方向や量を予測し,その結果を基にまず変形を抑制し,抑制しきれない変形量のみ金型を補正する必要がある。従来は,類似機種の実績を参考に変形を見込んだ補正を金型に織込んでいた。そして,試作鋳造した結果を基に寸法規格外れ,あるいは工程能力を満足しない懸念があると判断した箇所に補正を追加していた。これらの結果,金型修正にかかる費用や期間のロスが発生していた。そのため,SKYACTIVXのような全く新しい形状の場合,類似の変形が見込めず寸法規格外れ箇所が増加し,金型修正ロスが膨大になる。また,そもそも変形を抑制する方法を見出せないため,過大な変形を金型補正だけでは対応できず製品形状を成形できないといった,2つの大きな問題が発生する。これらの問題を回避するためには,製品設計の初期段階において,生産モデルを用いた机上検証で変形予測と抑制効果確認を行い,それらの結果を金型へ織込む,つまりMBDへと量産準備のやり方を進化させる必要がある。 APMC工法における中子熱変形のメカニズムをFig. 8に示す。中子は,製品形状を成形する部位(以下形状部)と各中子の位置決め構造(以下巾木)で構成されている。アルミ溶湯を充填すると,形状部が溶湯からの熱を受けてW/J中子全体の温度が上昇する。そして,W/J中子は温度上昇に伴い熱膨張するとともに強度低下を生じる。W/J中子は巾木で拘束されるため,自由膨張することが出来ず,熱膨張により生じた反力や浮力の影響を受けて変形する。特に薄肉W/J中子は断面積に対して表面積が大きいため,内部まで高温となる。このため,熱膨張量が大きく,大きな変形を生じる。

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