マツダ技報 2020 No.37
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―65―5.1 固定と変動の再定義 開発の目指す理想構造(コモンアーキテクチャー構造)と生産の目指す理想工程(フレキシブルライン構想)を徹底的にすり合わせ,製品・生産工程の固定要素と変動要素を再定義した(Fig. 5)。Fig. 5 Fixed Elements and Variable ElementsFig. 3 Design HighlightFig. 4 Business E■ciency5. FMLでの取り組みある。 現在起こっている進化は従来の生産ラインの枠組みの中では対応できなくなりつつあり,また現行ラインでの生産成立を優先させると商品に制約をかけてしまう可能性が出てきた。 課題は高品質で安価な多種類の商品をタイムリーに供給するという考え方はそのままに,現行車生産に影響を出さずに短期間で商品の進化に対応し生産できるようにすること。ボディー構造の進化に柔軟に対応でき,進化し続けることが可能な生産ラインを構築することである。4.2 台数変動への対応 昨今のSUV需要に表れているように消費者のニーズの変化は量・スピードが従来とは比較にならない。 多車種の計画順序生産に取り組んでいるマツダでは同一ライン内の車種の組み合わせの台数比率変更(縦スイング),ラインをまたいだ生産車種の追加や組合せの変更(横スイング)により対応してきた。しかし,ライン改造のボリュームが増え,また長年繰り返す中で生産ラインごと(拠点)で構成に違いが生じてきた。同一車種を複数ラインに導入するケースでラインごとに対策内容が異なるケースが出てきた。 縦・横スイングの対応に費やす追加投資とリードタイムをミニマムにしなければならない。 課題は現状ラインごとに決まっている生産車種と車種ごとの生産台数の容易な変更を可能とすること,縦スイングと横スイングにより制約無く短期間で要求とおりの車種と台数が生産できる生産体制とすること。4.3 高精度化 マツダ車の魅力である魂動デザインを実現するためにはボディー精度の向上が不可欠である。例えば,魂動デザインの特徴にデザインハイライトの流れの美しさがあるが,これには外板部品の面の流れのつながりが重要となる(Fig. 3)。 外板部品は1部品ではなく,サイドフレームアウター,フロントフェンダー,ドア,ボンネット等,複数の別々の部品があり,これらを一枚のパネルであるかのように部品と部品を段差なく,隙間を均一に組み立てて,面の流れを表現する。前述のようにボディーはおよそ300点の非常に多くの部品で構成されており,これらの全てを従来よりも高精度で組み立てる必要がある。 マツダのモノづくりのベースである“最高の効率で最高の価値をお客様にお届けする”というビジネス効率(Fig. 4)の考え方を念頭に置いて最新の多車種変量車体ラインのフレキシブル生産のレベルアップに取り組んだ。 以下に,4.1節,4.2節のFMLの取り組みを紹介する。 ボディー構造の“固定と変動”は,商品進化によるボディー構造の変化に制約を与えない様,固定要素を減らし変動要素を拡大した。 例えば部品点数と加工量の上限については,これまで固定要素と位置づけ工程を汎用化してきた。FMLでは変動要素と定義した上で工程の汎用化に取り組み,新構造・新機能への対応能力を大幅に広げることを可能とした。 生産工程の“固定と変動”は,拡大させたボディー構造の“変動”を工程で吸収ができるよう,以下に取り組んだ。 部品点数,加工量のような量の変化に対してはメインライン,サブラインの加工量の上限を考慮して前工程のスモールサブラインで吸収する。つまりスモールサブラ

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