マツダ技報 2020 No.37
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―66―6. FMLの具体像―3つのモジュール6.1 治具モジュール FMLでは5章で述べた�固定と変動”の考えに基づき治具を車種専用として車種の切替を装置によって行う設備構成とした。これを治具モジュールと定義した。 切替装置(図はターンテーブル)上にA車,B車それぞれの専用治具を配置し,装置が回転することにより車種の切替を行った(Fig. 7)。 これにより,従来の多車種共用治具から車種ごとの専用治具とし部品形状とそれに付随する加工基準の変化に柔軟に対応し加工の最適化を図るとともに改造時に混流する他の車種への影響を排除する。Model A Rotation Replacement Model B Fig. 6 Parallelization of SublineFig. 7 Jig Moduleインの数を変動とし増減させることで対応する。 また,工法や材料の変化に対してもスモールサブラインをモジュール単位で変更することで対応する。これによりメインライン,サブラインを都度大きく改造することなく治具などの専用部分のみの変更で対応することを可能とする。5.2 サブラインの並列化 車種追加時に工程改造の多いサブラインの在り方について見直した。 これまではメインラインとサブラインを直列としたライン構成として変化に対して工程や加工機の追加などで対応してきた。�変動”を増やしていくためにサブラインの加工工程をゼロベースで見直し加工効率の最適を導き出した。 サブラインは部品の増加に伴いサイクルタイムの中で部品組付けや搬送の時間の割合が増加し加工時間が短くなる傾向にある。サブラインの加工時間を増やす対応として加工時間によって工程数を決めるのではなく必要な加工を同じ工程で完結させ,加工時間に対してはサブラインを複数(並列)もつことで対応するライン構成とした。そうすることでメインライン同等の加工時間を確保し,より少ない工程数かつ省スペースでの展開を可能とした(Fig. 6)。 “変化”に対して工程を増減することなく対応が可能となり,対応アイテム削減にもつながる。 治具モジュールとしての設計,入替の効率化を図るために以下の標準化に注力した。 ・治具構造の最適化 ・治具と切替装置間の接続部の標準化 ・治具制御のソフトの標準化 ・配線配管の標準化 ・治具搬送時の搬送の標準化 これらを水平展開することでFML展開後には複数ラインへのコピー展開時の図面完全流用も可能とした。 また,本方式は治具の入替が前提の方案であるため,治具の軽量化を必須として取り組んだ。過去のさまざまな車種・今後の構造予測によりAssy単位と加工基準の比較をおこない,それぞれの工程ごとに治具サイズと治具を位置決めする装置の対応範囲を決定した。専用の治具は角パイプをつなぎ合わせたフレーム構造を基本として不要な機能を削ぎ落し,構成要素ごとの機能の最適化を行った。 併せて近年各段に進歩した解析ツールを活用して治具の移動時の変形,自重変形,及び加工時の治具の変形の変形解析を繰り返し行い,精度と剛性を満足した軽量構造を決定した。また実機の変化測定も実施し,解析の確からしさの検証と解析条件の整備も合わせて行い解析精度も向上させた。6.2 汎用セルモジュール 変動である加工量を吸収するためのスモールサブ工程においては最大限汎用化することに取り組んだ。治具モジュールと汎用溶接ロボットという最小限の設備での構成である。この工程を実現するために下記に取り組んだ。 ・加工ロボットの最適配置の標準化 ・加工機器のモジュール化 最大限の加工効率となる治具とロボットの配置について複数部品の加工動作シミュレーションを繰り返し行い汎用性の高い配置を割り出し,加工量に合わせて1台又は2台設置可能とした。限られたスペースで最

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