マツダ技報 2020 No.37
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―70―Fig. 2 Evolution of Design and the Accuracy of 2. 新世代商品群のデザイン実現課題2.1 バンパー金型とは バンパー金型は,凹側のキャビティ(固定側)と凸側のコア(可動側)から構成されており,キャビティとコアの隙間(形状クリアランス)に樹脂を充填して製品を成形する(Fig. 3)。そのため, バンパーのような意匠面をもつ金型では,金型形状がそのまま転写される特徴がある。バンパー部品で魂動デザインを実現するためには,キャビティとコアの単体形状の正確さだけでなく,両者の相対位置を正確に造り,ねらいの形状クリアランスを実現させることが金型製作にとって重要となる。RequirementsFig. 3 Bumper Face Mold2.2 バンパー金型の製作プロセス バンパー金型の製作プロセスは,Fig. 4上のように,機械加工,精度確認測定,形状磨き,組付け,型合わせによって金型を完成させる。その後,射出成形機に金型を取り付けてバンパーを成形し,デザイン再現性など製品品質を確認している。 これまで,形状磨きや型合わせでは,微小な段差などの機械加工精度のばらつきに対して技能者が砥石を使って多大な工数をかけながら精度修正を行っていた。しかし,砥石を使用した精度修正はねらいの精度を崩す結果となり,型合わせで繰り返し形状クリアランスを調整す3.1 単体加工精度向上の技術課題 比較的大きいバンパー金型では,大型門型5軸マシニングセンターで機械加工を行う。機械加工は,マシニングセンターの主軸先端にセットした切削工具を回転させて素材を削るが,切削工具の剛性は,工具長の3乗に比例して低下する。そのため,切削工具の剛性低下に伴う加工精度の低下を排除するため,従来は,Fig. 6に示すとおり切削工具をB軸(Y軸を回転中心)とC軸(Z軸を回転中心)で旋回させた状態の固定5軸加工を採用し,工具長を極力短くしてきた。 しかしながら,干渉回避のために数種類の加工軸方向で加工エリアを変えながらバンパー形状全体を切削するため,機械の変位や加工軸の旋回誤差によって加工精度にばらつきが生じ,加工エリアの境界に十数 μmの微小な段差(境界段差)が発生する(Fig. 7)。樹脂部品は境界段差が製品に転写されるため,通常は研削量が多い粗目の砥石で,境界段差がなくなるまで形状面を磨き補正しており,結果,金型単体精度のばらつきを更に大きくしている。しかも,CXḋ30のバンパー金型は,成形中の樹脂圧による金型の挙動を抑制するために,Fig. 6の構Core Guide Post Cavity Thickness Clearance CAVITY Core Tapered  Surface Fig. 4 Mold Manufacturing ProcessDifferent on the left and right Fig. 5 Zebra Pattern on Front Bumper3. 単体加工精度向上の取り組みる要因になっていた。結果,この形状クリアランスのばらつきにより,不均一な熱収縮による意匠面の曲率変化が起こり,デザイン再現に重要な左右の見栄えに影響を与えていた(Fig. 5)。 従って,砥石修正が不要な単体加工精度への向上と,単体加工精度を活かし,相対位置精度を保証する技術によって,技能者による不要な調整作業を極少化できる,高精度かつ高効率な金型製作プロセスへの変革を目指した(Fig. 4下)。

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