マツダ技報 2020 No.37
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―73―00 Distance:NearDistance::Near Shutter Speed:ShortShutter Speed::Short Variability ‐42% Fig. 15 Experimental ResultsFig. 16 Non-Contact Measurement Accuracy(A)Before Adjustment (B) After Adjustment Fig. 17 Digital Relative Position Prediction5. 金型製作プロセス革新の効果There is a difference  between the left and right. There is no difference  between the left and right.  測定条件を適正化するために,非接触式3次元測定機の測定原理から特に影響のあるパラメーターを抽出して品質工学を活用し取り組んだ。検証の結果,シャッタースピードと測定対象物との距離が特に測定精度のばらつきに影響があることがわかった。シャッタースピードについては,金型測定時の光の反射(ハレーション)を防止する対策を織り込み,カメラへ入光する光を抑制する条件を設定した。また測定対象物との距離については,カメラの焦点距離の範囲内でなるべく近い距離を適正な測定距離とした。上記の測定条件を適正化したことで細部の形状再現性が向上した(Fig. 15)。 測定条件の適正化により,細部の形状再現性が向上したが,金型の寸法に対して測定結果がXYZ軸方向ともに数十 μm大きくなっていることが分かった。基準となるガイドポストの測定では十数 μmの誤差でも相対位置精度に影響がある。そのため,ガイドポストの測定誤差発生の要因を追求し,測定時の温度変化の影響をつきとめた。わずか1℃の温度変化でも3mクラスの金型では十数 μmの寸法変化がある。そこで,測定時の温度変位を極力排除するために,温度補正を行った。具体的には,XYZ各軸方向の温度変化に対する寸法誤差から,補正係数を算出し測定結果に加味した。 これらの取り組みにより非接触式3次元測定機の測定精度は現状に対してばらつきを42%改善し(Fig. 16),機械加工面をより高精度にデジタル上で再現できるようになった。4.3 デジタル型合わせ技術の開発 機械加工面の測定結果から,デジタル上でキャビティとコアの相対位置を定量化し,形状クリアランスのばらつきの補正をデジタル上で行うデジタル型合わせ技術を開発した。具体的には,キャビティとコアの機械加工面の測定結果と,組付け基準のガイドポストの測定結果を比較し,均一な形状クリアランスになるガイドポストの補正値を計算できるようにした。その結果,デジタル上で設計どおりの形状クリアランスを再現させた(Fig. 17)。この補正値に基づいて金型のガイドポスト位置を調整することで,ダイスポッティングプレス機での確認,調整を極少化したデジタル型合わせができるようになった。 従来は各工程内で,技能者が精度修正するプロセスであったが, 1エリア1方向加工で高精度に加工し,デジタル型合わせで相対位置を調整するというシンプルかつ形状クリアランスの精度ばらつきを抑制したプロセスを実現した。 Fig. 18に先代とCXḋ30の形状クリアランスのばらつきを示す。先代に対して形状クリアランスのばらつきを50%削減した。Fig. 19に金型完成後の初期段階で取得したCXḋ30のフロントバンパーの見栄えを示す。魂動デザインの再現性を確認するためにゼブラ表示を行ったものであるが,左右の見栄えの違和感がなくなり,面の連続性もある製品品質にできた。また,単体加工及び相対位置精度を向上したことで,バンパー金型製作工数を24%削減できた。

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