マツダ技報 2020 No.37
82/138

―75―*3  工学院大学 工学部機械工学科 Aiming to improve the value of cars, Mazda has been developing technologies with the concept of Material Model-Based Research (MBR) for the e■cient development of innovative materials. In this study, aiming to achieve desired acoustic characteristics with a limited mass and volume of a porous sound-absorbing material that improves quietness in a car, we have developed technology that e■ciently designs the microstructure of the material. This technology is a combination of the homogenization method that derives an average macro-structural property from the micro-structural property of the material and Biot model which is relatively simple prediction model for sound absorption/insulation performance. This technology enables highly accurate and e■cient parametric calculations for microstructure’s shape and size. Here we introduce the outline of this Key words: Noise, Acoustic material, CAE, Homogenization method, Biot’s modeltechnology and the application of the technology to engine encapsulation.Technical Research CenterKogakuin University, Graduate School of Mechanical EngineeringKeisuke YamakawaDaiji KatsuraTakashi Yamamoto1. はじめにDevelopment of Microstructural Design Technology of Porous Sound Absorbing Material and its Application to Sound Absorbing Component Design Based on Material Model Based Research論文・解説13全体としての性能や機能と結び付けることで,微視構造レベルでの制御因子を明らかにし,必要機能からのバックキャスティングによって材料開発を効率的に行う,材料モデルベースリサーチ(MBR)(4)の考え方に基づいた研究開発をしている。本研究では,室内の静粛性を高めるために一般的に用いられる多孔質吸音材について,限られた質量と容積の中でねらいの特性を実現する材料の設計技術構築に取り組んでいる。 これまでに,材料の微視構造から巨視構造における特性を導出する手法である均質化法(5)(6)と,比較的簡便な多孔質材の吸遮音性能予測モデルであるBiotのモデル(7)を組み合わせて,ねらいの吸音特性を実現するために必 車室内の静粛性能は,運転者,同乗者の安全・安心で快適なドライビング環境をサポートする重要な性能の一つであり,マツダ車の性能も年々進化している(1)(2)(3)。一方で,他性能や軽量化と相反することも多く,これらと整合のとれた開発を効率良く行う必要がある。そのためにはできるだけ開発の早期に他性能とのバランスを取りながら,必要最小限の質量,容積での防音防振部品の設計要件を導出することが重要である。 マツダでは,材料の微視構造内部で生じている物理現象をそのメカニズムに基づいた数式でモデル化し,材料*1~2  技術研究所 山川 啓介*1桂 大詞*2山本 崇史*3要 約 マツダでは,クルマの価値向上につながる革新的な材料を効率的に開発する材料モデルベースリサーチ(MBR)の考え方に基づいた研究開発を進めている。本研究では,車室内の静粛性向上に寄与する多孔質吸音材料に対して,限られた質量と容積の中でねらいの音響特性を実現するために,その微視構造を効率的に設計する技術を開発した。本技術は,材料の微視構造特性から平均的な巨視構造特性を導出する手法である均質化法と,比較的簡便な吸遮音性能予測モデルであるBiotのモデルを組み合わせたもので,微視構造の形状や寸法に対する高精度かつ効率的なパラメトリック計算を可能とするものである。本技術の概要とエンジンカプセル化技術への適用事例について紹介する。Summary多孔質吸音材微視構造設計技術の開発と吸音部品設計への適用材料モデルベースリサーチによる

元のページ  ../index.html#82

このブックを見る