マツダ技報 2020 No.37
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―77―Fig. 5 Comparison of Normal Incidence Sound (Porosity 90%,Averaged Void Diameter 251μm) 本研究ではこの山本らの手法を利用して,微視構造に関するパラメータースタディを多数回行うことで,両パラメーターの関係式を導出することとした。一旦この関係式が得られれば,微視構造パラメーターを変更した場合の音響特性をBiotモデルによって短時間で算出することができるようになる。ここに最適化アルゴリズムなどによる多数のパラメータースタディを適用することで,比較的短い時間でねらいの吸音特性を実現する微視構造パラメーターを求めることができる。このようにして所望の音響特性を実現するために必要な多孔質材料微視構造を高精度かつ効率的に設計する手法を構築した。一連の微視構造パラメーター設計プロセスをFig. 6に示す。Absorption Coe■cient Calculated by Homogenization Method and Measured: Foamed Resin Porous Material Fig. 6 Micro-structure Design Process of Porous Homogenization Method and Biot’s ModelSound-Absorbing Material by Hybrid Method of Fig. 4 Acoustic/Vibration Energy Propagation Analysis Model Inside Porous Material by Homogenization Method仮定し,流体部のみに熱伝導方程式を適用する。境界面では温度の連続条件を考慮する。これら3つの方程式を解くことによって,吸音材内部での主な音響エネルギー損失(熱エネルギーへの変換),すなわち,構造減衰損失,粘性損失及び熱散逸損失を定量的に解析することができ,巨視的な吸音特性の解析が可能となる。更に質量保存則及び状態方程式も考慮して,全ての支配方程式を解き,得られた微視構造特性関数について微視構造内で体積平均することで巨視的なパラメーター(均質化パラメーター)を得ることができる。そしてこの特性を用いて材料の巨視的な挙動を解析することで音響性能が求められる。以上により,構造パラメーターと音響性能とが紐づいた解析が可能となる。解析は全て有限要素法(FEM)で実施され,1ケースの計算時間は計算専用のPCにて数十分~数時間を要する。 この手法を発泡樹脂多孔質材に適用して,吸音率を予測した結果をFig. 5に示す。実測値と良い整合が得られている。なおユニットセルとしては後述するKelvinセル構造を適用した。2.3 均質化法とBiotモデルのハイブリッド手法による多孔質吸音材微視構造設計プロセスの開発 多孔質材の微視構造パラメーターとBiotパラメーターの関係が定量的に分かれば,計算コストの低いBiotモデルが利用でき,微視構造と音響特性が紐づいた解析を短時間で行うことが可能となる。両パラメーターの関係について研究した事例としては,ヤング率や流れ抵抗など一部のBiotパラメーターについて,構造を単純化することで解析的に求めた事例(12)や,微視構造寸法との関係式を実験的に同定した事例がある(13)(14)。一方,山本らは,均質化法により全てのBiotパラメーターを導出する手法を開発した(15)。

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