マツダ技報 2020 No.37
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―83―2.3 評価方法 表面処理の効果を調査するために今回実施した試験方法の詳細を以下に示す。(1)せん断強度試験 せん断引張時の試験速度は10mm/minとし,専用の引張治具を使用し試験を実施した。この治具は負荷を純せん断で加えるとともに,接合界面近傍以外での樹脂母材破断を防止するためのものである。(2)疲労試験 荷重比0.05の部分片振り条件にてせん断引張疲労試験を実施した。試験回数は107回を上限とし,破断に至るまでの荷重別試験繰り返し数を調査した。また,併せて疲労試験前後の接合界面の状態についても断面及び破面観察を実施し,表面処理の影響を調査した。(3)耐久信頼性試験 自動車の使用環境を想定し,一定の高温高湿条件で保持する恒温恒湿試験,及び低温⇔高温の環境を繰り返し与える冷熱衝撃試験の2種類の耐久信頼性試験を実施した。試験片は室温放置で安定化させた後,せん断強度試験による比較を行った。2種類の耐久信頼性試験の試験条件をTable 3に示す。Table 3 Endurance and Reliability Test Condition3.1 せん断強度試験結果 アルミ表面処理材2種を含む計3種のアルミを使用した場合のせん断強度の比較をFig. 5に示す(n=3)。表面3.2 疲労試験結果 せん断引張疲労試験結果をFig. 6に示す。疲労限が約2kNの基準材に対し,表面処理したアルミを使用すると静的強度と同様に疲労特性は向上し,破断回数のバラツキも低減する傾向を示した。また,その効果は陽極酸化処理の方が若干高い。Fig. 6 Fatigue Property Curve (Test Load)Fig. 5 Tensile Shear Strength3. 実験結果及び考察処理がない場合と比較して,どちらの表面処理においても1.5kN以上強度が向上した。 各仕様の疲労試験後の破断面写真と樹脂溶融範囲におけるアルミ側への樹脂付着面積率をFig. 7にまとめる。アルミ/樹脂接合の場合,接合中に溶融した樹脂が広がった範囲が接合領域となる。金属同士の接合で通常使用される抵抗スポット溶接など,他の一般的な点接合方法よりも接合径が大きくなるため,せん断強度に有利となる。 各仕様で接合条件及びそれによって決まる入熱量は一定のため溶融した樹脂の広がった範囲は同等であるが,その範囲内の接合状態は仕様ごとに異なっている。CFPPの板厚内で破断し樹脂がアルミ側へ付着している領域の面積率を画像解析により算出すると,陽極酸化材が60~65%と最も高く,その強度特性の向上効果を裏付ける結果となった。 続いて,疲労試験中における破壊起点からの亀裂進展の状態を調査するため,破断後のアルミ側破面におけるのツール回転数,挿入速度及び挿入量についてTable 2にまとめる。 試験片形状はせん断強度及び耐久信頼性評価用は30mm×100mmで重ね代長手30mm,疲労試験用は50mm×105mmで重ね代長手40mmとし,それぞれ重ね部中央をTable2の条件で接合した。Table 2 Joining Condition

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