マツダ技報 2020 No.37
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 2種の耐久信頼性試験の結果,基準材においても接合界面の極端な強度低下は生じなかった。多くが樹脂母材破断となっており,アルミ表面処理材を使用することで更に界面破断する継手は減少する傾向にある。樹脂種と表面処理の適切な選択により高い耐久性能を得られることが確認できたとともに,樹脂の母材破断強度のバラツキが大きいことから,今回評価したような環境下では樹脂材料の劣化による物性低下に注意する必要があると言える。―84―3.3 耐久信頼性試験結果 恒温恒湿試験及び冷熱衝撃試験後に調査したせん断強度の比較結果をFig. 10にまとめる。本評価では樹脂母材破断を防止する治具を使用していない。そのため,接合界面でなく樹脂母材で破断した継手は破断強度のデータに上矢印のマーキングを付けている。Fig. 7 CFPP Adhesion Ratio on AluminumFig. 8 State of Crack Growth near the OriginFig. 9 EDX Line AnalysisFig. 10 Endurance and Reliability Test4. まとめ起点付近の樹脂付着状態を観察した(Fig. 8)。破壊の起点は破断に至るまでの途中の試験回数で試験を停止したサンプルの断面を調査し推定したものである。この結果から,表面処理を施すことで亀裂は樹脂内部方向へ進展し,樹脂付着高さが増加していることが分かる。界面強度の向上により亀裂起点の近傍で樹脂の凝集破壊に変化していると考えられ,樹脂の付着高さは陽極酸化処理が最も高くなっていた。 陽極酸化処理したアルミとCFPPの接合界面近傍について,EDX(エネルギー分散型X線分析)による成分ライン分析を行った結果をFig. 9に示す。CFPPの主成分Cがアルミ表面の酸化層内に存在しており,樹脂が浸透していることが分かる。今回使用したCFPPのような材料の場合,強度向上効果には主となるアンカー効果に加えて,接触面積拡大による樹脂母材成分に起因する接着力の向上も寄与していると考えられる。 摩擦熱を利用したアルミ/樹脂異種材料点接合について,その強度特性におよぼすアルミ表面処理の影響をせん断引張試験,せん断引張疲労試験,恒温恒湿試験,冷熱衝撃試験を行い調査した。 ポリオレフィン系有機被膜処理及び樹枝状陽極酸化処理の2種類について比較評価を実施した結果,ともに基準となる酸洗材に対して強度特性や耐久信頼性は向上し,バラツキも低減する傾向を示した。また,その効果は陽極酸化処理の方が若干高い結果となった。樹脂母材自体

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