マツダ技報 2020 No.37
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―86―3.1 吸気系の全体像と検討プロセス ここでは,吸気系の昇温過程を踏まえた上で,MBDにThis paper presents the development of intake air cooling with model-based development. Since the temperature of the intake air a■ects the e■ciency of internal combustion engine, the technology of intake air cooling could be a key factor for the realization of fuel-e■cient cars and the greenhouse gas reduction. In this study, we develop novel technologies to lower the temperature of the intake air based on numerical simulations and the sensitivity analysis via the adjoint method. The e■ectiveness of these methods is validated through the measurement of the temperature of the intake air system in a test vehicle.Technical Research CenterKohta SuzunoMasaharu MarumotoTohru HokazonoKota MaekawaKazuaki NaraharaKey words: heat・fluid, intake and exhaust system, CFD, Adjoint method2. 吸気温低減技術の重要性1. はじめに3. 吸気温低減のための感度解析Intake Air Cooling with Model-Based Development論文・解説15 マツダは2030年を見据えた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」を2017年に公表し,地球・社会・人の調和の実現を目指した技術開発を進めている。その中で特に地球環境問題の解決に関しては,温室効果ガスの大幅削減を目指し,小型軽量な電動化技術と高効率内燃機関を実現するための技術開発に取り組んでいる(1)。 内燃機関の熱効率向上に向けては,水添加(2)や筒内壁温予測技術(3)などさまざまな研究が進められており,それらと相補的な技術の1つに吸気温の低減技術がある。本論文ではその取り組みの概要について説明する。 本研究の目的は,内燃機関の熱効率向上に向けた吸気*1~5  技術研究所 温の低減技術を確立することである。ここで吸気温とは,エンジン筒内に流入する空気の温度を指す。吸気温の低減によって,内燃機関が従来から抱えてきた問題の1つである高負荷運転時における異常燃焼を改善することができ,その結果,高圧縮比化による熱効率向上,エンジントルク向上,NVH性能向上といった性能向上が可能となる。このように,吸気温の低減は優れた燃費や加速性能,静粛性をクルマにもたらす重要な要素技術である。これを実現するために,従来から取り組んできたモデルベース開発(以下MBD)(4)に加えて逆解析を用い,効率的に解を導き出すプロセス革新を行いながら,吸気温低減技術の開発に取り組んでいる(5)。鈴野 浩大*1丸本 真玄*4前川 耕太*5外薗 徹*2楢原 和晃*3要 約 エンジンの高圧縮比化では,高負荷運転時における異常燃焼の抑制が課題であり,吸気温の低減は課題解決に有効な要素の一つである。この実現に向け,従来から取り組んできたモデルベース開発に加え,最少の計算回数で効率的に解を得る解析技術を組み合わせ開発に取り組んでいる。まず,エンジン吸気系のモデルに対して逆解析の一手法であるアジョイント法による感度解析を行い,吸気温の低減に対して効果的な冷却部位をバックキャスティングで見出した。次に,得られた知見を基に吸気温の低減効果をCAE・実験により検証し,エンジンルームへの効率的な導風要件及び吸気ポート断熱構造要件を導いた。一連の検討から,本研究で開発中の技術にはねらいどおり,吸気温の低減を実現できるポテンシャルがあることを確認した。Summaryモデルベース開発によるエンジン吸気温低減の取組み

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