マツダ技報 2020 No.37
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―88―Fig. 4 Geometry of Intake System3.3 解析結果 Fig. 5は得られた感度を3次元モデル上にマッピングしたものである。ここでの感度は,吸気系の壁面温度を微小減少させた際に,第4気筒の吸気温がどの程度低減するかを表すものである。図は青いほど感度が大きいことを意味する。最も冷却感度が高い部位はサージタンクの車両中央寄り壁面,次いでインテークマニフォールド末端から吸気ポートにかけての管壁面となっている。Fig. 5 Result of Sensitivity AnalysisFig. 6 Sensitivity Distribution on Wall of Surge TankFig. 7 Heatflow into Surge Tank, Hose, Throttle Valve and Intake Manifold4. 冷却・断熱技術の開発する量である。この解析手法は空力設計における車体形状最適化などの用途で広く研究されてきたが(13),近年は上記の立場からこの手法を逆解析と称する場合もあり(8,11),出力から入力を求める逆問題(7,14-16)の観点からも研究が進んでいる。 以下,本手法による吸気系の感度解析結果を示す(5)。なお,本検討で用いている解析条件は以下のとおりである。モデル形状はFig. 4に示す,自然吸気2.0Lガソリンエンジン搭載車における吸気系形状とし,モデル f は吸気系内部の空気と熱の流れを記述するナビエ・ストークス方程式及びエネルギー保存則とする。走行シーンは外気温25℃下での車速40km/h中負荷定常走行とする。モデルの入力 x として,試験車両を用いて当該環境下にて計測した吸気系の管壁面の温度を与える。また評価指標 J は,第4気筒の吸気ポートにおける吸気温 Tport と設計目標値 Ttgt の二乗偏差 |TportーTtgt|2 を用い,なおここで設計目標値 Ttgt は外気温と同一とする。アジョイントモデル g の生成及び解析はFlowDesigner2019にて実行する。 次に,広範囲にわたって感度が高いサージタンクについて更に詳しく検討するため,サージタンク壁面上のいくつかの代表的な点における感度を定量的に評価する。その結果がFig. 6である。この図から,サージタンク壁面温度の感度は各部位ごとで大きな差があり,特定部位の冷却によって吸気温を効果的に低減できる可能性があることを示唆している。 ここで,得られた感度分布の妥当性を別の観点から考察する。Fig. 7は吸気が壁面から授受する熱量をCFDモデルにより推定したものである。吸気が最も受熱するのはサージタンクであり,これはFig. 5の感度解析結果においてサージタンクが広範囲にわたって大きな感度を示していることと符合している。これらの結果はともにサージタンク内での昇温が吸気温に大きく影響していることを示唆するものであり,感度解析結果と熱収支に基づく分析結果は矛盾するものではないことがわかる。なおサージタンク壁面が高感度となる理由については,速度及び温度分布の観点からの考察が文献(5)に与えられている。 以上から,今回の解析条件の基で吸気温の低減に効果的な冷却部位はサージタンク,次いで吸気ポートだとわかった。 吸気温の低減を車両搭載状態において実現するための

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