マツダ技報 2020 No.37
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―89―4.2 吸気ポート断熱技術 次に,吸気ポートの断熱による吸気温の低減効果について説明する。前述の感度解析の結果から,サージタンクに次いで,インテークマニフォールド出口から吸気ポートの壁温低減が吸気温の低減に大きく貢献しうることが示唆されている。そこで,Fig. 10のように吸気ポートを断熱し,吸気を高温のポート壁から熱的に隔離することを考える。Fig. 8 Overview of CoolingFig. 9 E■ect of CoolingFig. 10 Overview of Port Insulation具体的な手段について説明する。吸気温の低減を実現するには,感度解析から見出した高感度部位であるサージタンクや吸気ポート付近を冷却・断熱すればよい。ただし,冷却機器の付加はコスト,重量増加につながるため,最小限のシステム構成で効果が得られるものが望ましい。ここではその具体的手段として,外気を利用したサージタンク冷却,及び吸気ポート断熱の二つを検討した。4.1 外気を効率的に用いるサージタンク冷却技術 前述の解析からサージタンクの壁温低減の重要性が示唆されたため,その実現手段を考える。サージタンク壁面の冷却には,エンジンルーム内に外気を導入することが効果的であるが,空力性能の悪化などの問題が生じる。そのため,最小限の導入風量で最大限の冷却効果を発揮する構造の具体化と検証を先行的に進めている。Fig. 8は,少量の外気導入によるサージタンク冷却の概念図である。エンジンルーム内にはシンプルな形状の導風構造を新たに設けており,これを用いて外気をサージタンク近傍に直接輸送し,サージタンクを局所的に冷却することをねらいとしている。前述の感度解析結果を踏まえ,本構造により導入された外気はサージタンク半面の冷却感度の高い部位を集中的に冷却するよう設置している。また,本技術では導入された外気の流量が車載ラジエータ通過風量比で5%程度となるように設定し,レイアウト面及び空力面での問題が極力生じないよう配慮している。 次に,吸気温の低減に対する効果を実験的に示す。上記の技術を実装した試験車両を用い,吸気温の計測を行った。ここで計測条件は前節の解析条件と同じく外気温25℃下での車速40km/h定常走行としている。またエンジン負荷については,平地走行相当の低負荷,登坂相当の中負荷の2ケースで行い,この時ラジエータファンは未稼働状態である。その結果をFig. 9に示す。計測部位はサージタンク出口,第4気筒のインテークマニフォールド長手方向中央部,及び吸気ポート内部とし,各部を通過する吸気の温度を熱電対により計測した。結果から,微小風量による冷却によりサージタンクにおいて10℃強の吸気温の低減が確認でき,サージタンクより下流においても吸気温の低減が見られた。以上より,吸気温の低減に対してはサージタンクの感度が高いことが確認された。今後,更に各性能要件を具現化していく。 断熱材の主たる制御因子である厚さと熱伝導率について,それらの影響を1次元シミュレーションで試算した結果をFig. 11及び12に示す。なお解析の対象及び条件は,前節と同じく自然吸気2.0Lガソリンエンジン搭載車における外気温25℃下での車速40km/h定常走行,エンジン負荷は軽負荷及び中負荷相当の2種である。ここで用いた1次元モデルでは,吸気ポート形状は実機形状を模擬したものとし,吸気ポート内の流動,吸気ポート壁面と吸気の間の熱伝達,断熱材を含む吸気ポート壁内の熱伝導,吸気ポート壁面とエンジンクーラントとの熱伝達をモデル化対象としている。断熱材厚みは吸気ポートに設置可能な3mm以下,熱伝導率は樹脂レベルから下限は空気相当の値までとした。ただし本検討では,断熱材のレイアウトによる充填効率等への影響は未考慮としている。なおFig. 11では断熱材の熱伝導率を0.2W/(m・K),Fig. 12では厚みを3mmとしている。

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