マツダ技報 2020 No.37
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―90―Fig. 11 Dependence of Temperature on Thickness of Fig. 12 Dependence of Temperature on Conductivity Fig. 13 Dependence of Temperature on Thickness of Air Layer Inside the InsulatorInsulatorof Insulator5. おわりに 結果をみると,断熱材の厚さを増すほど昇温は抑制されるが,低負荷・中負荷ともに,断熱材の厚さをその構造上の上限である3mmとした場合でも見込まれる吸気温の低減効果は2℃未満にとどまる。さらなる昇温抑制のためには,断熱材の熱伝導率低減が効果的であり,空気相当に近づけることで,同条件で約4℃吸気温を低減できる可能性がある。 その実現手段の1つとして,断熱材を中空構造として内部に空気層を設けた場合のシミュレーション結果をFig. 13に示す。断熱材の厚さは3mm,熱伝導率は0.2W/(mK)とし,空気層部分の厚さの影響を試算したものである。Fig. 12,Fig. 13の結果から,空気層厚さを2mmとすることで,熱伝導率0.04W/(mK)の断熱材相当の効果があることが分かった。 以上から,サージタンク冷却,吸気ポート断熱が吸気温の低減に有効であることが確認された。 本論文では,内燃機関の熱効率向上に向けた吸気温の低減技術の開発について,概要を紹介した。まず,吸気系を対象として,吸気温に対する吸気管の壁面温度の影響,すなわち感度を計算し,低減に効果が高いと思われる冷却部位を可視化した。次いで,解析結果に基づき,冷却・断熱効果が高いと思われる部位に対して冷却・断熱技術を適用した場合の効果を評価した。その結果,今回の検討条件下では,エンジンルーム内への外気導入構造により10℃強,吸気ポート断熱構造により4℃以上の吸気温低減が可能であることが示唆された。今後,導風構造の洗練やエンジン冷却系など,関連技術との組み合わせにより吸気温の低減効果を高め,高効率内燃機関をサポートすべく,技術開発を加速させる。ᅠ(1) MAZDA: ANNUAL REPORT(2019)ᅠ(2) 葛晰遥ほか:高温高圧雰囲気場における水添加が自着火・燃焼反応におよぼす影響,マツダ技報,No.36,pp.265-271(2019)ᅠ(3) 山本亮ほか:高熱効率燃焼の開発に適用する筒内壁温予測技術,マツダ技報,No.35,pp.9-14(2018)ᅠ(4) 藤川智士: マツダの目指すモデルベース開発,マツダ技報,No.31,pp.44-47(2013)ᅠ(5) 鈴野浩大ほか:逆解析によるエンジン吸入空気の冷却検討,自動車技術会論文集 51巻4号, pp. 707-712(2020)ᅠ(6) 桃瀬一成ほか:自然対流熱伝達問題に対する熱的境界条件の影響(摂動随伴作用素表現に基づく数値解析),日本機械学会論文集B編 63(614), pp.3347-3352(1997)ᅠ(7) 桃瀬一成ほか:対流熱伝達特性に対する熱および流れの境界摂動の影響(随伴作用素表現に基づく数値解析),日本機械学会論文集B編 66(646), pp.1473-1479(2000)ᅠ(8) 安部恒平ほか:随伴数値解析を利用した自然対流場の最適化,日本機械学会論文集B編 70(691),pp.729-736(2004)参考文献

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