COTYを受賞した先代をさらに洗練・進化させた6代目
1985年1月、6代目ファミリアが誕生。”世界に通用する高品質のファミリーカー”という開発理念を掲げ開発された。安定感ある台形デザインを基調としたスポーティかつ個性的なスタイルは、車体表面をフラッシュサーフェス(平滑な面)とし、世界最高レベルの空力性能を実現。また、当時では珍しくボディ剛性の高さを訴求し、「ファミリア=ボディ剛性の高いクルマ」というイメージを定着させた。
ラインナップも一層充実。ラリーへの本格参戦を視野に、悪路の走行に適した車高調整機能を備えた日本初のフルタイム4WDを投入し、翌86年には4座席オープンのカブリオレも発売。ロールバーを備えた手動式オープントップで、RX-7カブリオレやロードスターに先駆けての登場だった。
5ドアハッチバックに新風
「アスティナ」が人気の7代目
1989年に誕生した7代目では、3ドアハッチバックと、4ドアセダンに加え、5ドアハッチバックの「アスティナ」が新登場。ボンネットを低くし、リトラクタブルヘッドライトを採用した個性的なスタイルが奏功し、ヨーロッパで大ブレイク。アスティナは従前の5ドアハッチバック車の実用本位なイメージを一掃した。
また、米国では4ドアセダンを「プロテジェ」の名で販売。排気量の大きい1,800ccエンジンを搭載し、アメリカ市場での基幹車種となっていった。
小型車の新しい世界基準をめざした8代目
そして、歴史の最後を飾った9代目
21世紀の到来を目前に、価値の多様化や環境志向に対応し、小型車のあるべき姿を求めた8代目(1994年)と9代目(1998年)。8代目は「ベストコンパクト」をコンセプトに、快適性、安全性、走行性能を基本から磨き直した。最高効率のパッケージングを追求し、圧倒的な室内空間を誇った8代目「新方向ファミリア」は、ファミリア生産累計1,000万台を達成した記念すべきモデルにもなった。
一方、9代目は「走る楽しさ(ファン・トゥ・ドライブ)」を追求し、若い心を持ったユーザーのライフスタイルに合わせた新ジャンルのクルマとして開発。上級のカペラとシャシーを共通化し、コンパクトでありながら、広い室内空間を実現。マツダ初のS-VT*1搭載や、開発過程でMDI*2を取り入れたことも話題となった。新提案の5ドア「S-ワゴン」は、クラス初のリアシートスライド機構や、折り畳むとテーブルになる「スペースアップシート」を採用し、一際光る利便性を誇った。
9代目を最後に、40年近い歴史に幕を閉じたファミリア*3であるが、マツダの名を世界中に広め、経営の屋台骨を支え続けた車であることは誰もが認めるところである。
*1 連続位相可変パルプタイミング
*2 マツダデジタルイノベーションの略。コンピューター上で設計・実研を行う技術
*3 ファミリアバンは日産からのOEM車として2010年現在も継続販売中