家族そろってドライブを、という期待がこめられた名車ファミリア。その歴史は、商用車のイメージを塗り変えるモダンなバンから始まった。1960年初頭、総合自動車メーカーへの移行を目指していたマツダは、600~800ccクラスの水冷エンジン搭載の本格的セダンを開発し、小型乗用車市場へ進出する計画を立てていたが、その一方で軽商用車の性能や居住性に満足しないユーザーが1クラス上のライトバンを望んでいるという市場調査の結果に注目。セダン中心の開発計画を変更し、ライトバン開発を優先した。こうして生まれたのが、1963年9月に発表された「ファミリアバン」である。搭載されたエンジンは新開発アルミ合金製水冷4気筒782ccエンジン。この時代にオールアルミエンジンが実用化できた背景には、ダイキャストやシェルモールドといった優れた先進鋳造技術や、加工技術の素地がマツダにあったからにほかならない。エンジンと直線的で引き締まった個性的なデザインなどが好評を博し、発売から4ヵ月後の1964年2月にはこのクラスで44%にまでシェアを拡大、一躍トップに立った。
セダンの歴史を塗り変えた「ファミリアセダン」
ファミリアバンの生産を拡大する一方で、1961年の東京モーターショーでは小型乗用車「マツダ700」、翌1962年には「マツダ1000」をプロトタイプモデルとして出品。そのときの反響から「軽自動車とは一線を画すファミリーセダン」「お客さまのモダンな感覚にマッチするデザイン」などを目標に開発を進め、1964年10月、「ファミリアセダン」が登場した。性能、快適性、スタイルなどすべての点でバランスのとれた乗用車として高い評価を受け、販売開始後ひと月で早くも23%の市場シェアを獲得。ワゴン、2ドアセダン、トラックを加えたファミリアシリーズは、1964年12月にはシリーズ月産1万台を突破し、マツダの主力車種としての地位を確立した。
モーターショーでマツダ1000を出品したときの様子