MAZDA

MAZDA 100TH ANNIVERSARY

第8話
それぞれの“頂点”を目指した
バブル時代のクルマたち
個性あふれる商品群

マツダはバブル景気の時代、国内市場に向けて極めて多くの新型車を短期間に集中投入した。1989年に販売網を大手メーカー並みの国内5チャネル体制に拡大したため、チャネル数に見合うだけの商品の品揃えが急務となったのだ。

以降5年間で発売した新型車は実に25車種以上。まさに矢継ぎ早に新型車を送り出したことになる。しかも、ただ頭数を揃えただけではない。各チャネルの特性に合わせた開発が肝要であり、それぞれの新型車の差別化、個性の演出にまで踏み込んだのだ。このため、少しでも新規性のある企画、技術、デザインを次々に織り込もうと、マツダのエンジニアたちは奮闘した。折からの好景気や成長への野望が大きく後押しする……そんなエネルギッシュな時代でもあった。

こうして生まれたバブル期のマツダ車たち。代表車種を一台だけあげるのは困難だが、1990年に発売したユーノスコスモは抜群に話題性が高かった。「史上最高のロータリー車」を合言葉に、量産車初の3ローター・ロータリーエンジンを搭載。さらに「上質で豊かな気分になれるラグジュアリーな空間」を目指し、本物志向で素材を厳選。シートの本革にはオーストリア製の最高級品を、内装のウッドパネルにはフランス産の楡材をミラノで仕立てた天然杢を採用した。そのうえ、世界初のGPSナビゲーション機能など最新の電子技術も駆使するという、全く先例のない高級パーソナルクーペだったのだ。

また、マツダセンティアは、低くてワイドな独自のフォルムで流麗なデザインを実現。足回りにも注力し、ドライバーズカーの価値を高めたプレステージセダンであった。世界初のミラーサイクルエンジンを搭載したユーノス800は、「十年色褪せない価値」を標榜し、徹底的に品質をつくり込んだ上級セダンだった。

高級車だけにはとどまらない。〝人馬一体〟の思想で開発したユーノスロードスターは、オープンカーの開放感と操る楽しさを満喫できる稀有なスポーツカーとなったし、内外装デザインに丸のモチーフを大胆に採り入れたオートザムキャロルは、抜群の存在感を放つ親しみやすい軽乗用車となった。本当に役者には事欠かない。

あれから30年近くが経過した。当時のクルマは残存数が激減しているが、今なお大切に愛用し続けてくれる根強いファンがいる。その存在には大いに勇気づけられると同時に、あらためて気づかされることもある。

これらのクルマには「キラリと光る個性」があった。必ずしも平均点の高いクルマづくりではなかったかもしれないが、全方位的な評価と引き換えに、他車にはない「尖った部分」が必ず備わっていた。そのデザイン、その技術、そのコンセプトに強い共感を呼ぶ要素があったことが、きっと末永く気に留めてもらえる理由であったに違いない。そしてその源泉を辿ったとき、〝クルマが人に提供できることは何か?〟〝人の生活を豊かにするクルマとは?〟という妥協なき追求から生まれた、新しい価値提案に行き着くのだ。今なお色褪せない〝極め抜かれた個性〟が、そのことの大切さを物語っている。

ユーノスコスモ内装 (1990年)
ユーノスコスモ内装 (1990年)
ユーノスロードスター (1989年)
ユーノスロードスター (1989年)
ユーノス800 (1993年)
ユーノス800 (1993年)
センティア (1991年)
センティア (1991年)

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