営業スタッフが、クルマの開発者からクルマづくりについての思いを聞く。そしてその思いやこだわりを、お客様にどう伝えるか、全国の仲間と共有する。開発・営業が垣根を超え、クルマの価値について考え、語り合う場。それが「共創会」です。
共創会で何が得られるのか、仕事にどう活かせるのか? 実際に共創会に参加した営業スタッフ2名と開発者1名の対談から、その意義についてご紹介します。アテンザ主査
松岡英樹
1985年入社
営業スタッフ
隅田泰裕
2005年入社
営業スタッフ
宇都一展
2005年入社
宇都
私が共創会に興味を抱いたのは、日々の商談を重ねる内に「もっとクルマについて学ばなきゃいけない」という思いが強くなっていたからです。お客様にクルマの説明をする際、例えば車高や車内空間の広さ、燃費などについては、新人でも話せます。カタログに書いてありますからね。ところが、なぜその広さにしたか、なぜサイドブレーキはこの位置についているのか…など、数値の背景や突っ込んだ内容だと、うまく答えられないことがあったんです。
隅田
私も宇都さんと似ています。アテンザもアクセラもかっこいいのはわかっている。でも、ふと、なぜかっこいいんだろうな?と思ったんです。作り手は、クルマにどんな情熱や哲学を込めているのだろう? 自分は営業現場で、それらをお客様にきちんと伝えているだろうか? そんな疑問を解消しようと、共創会に参加しました。
松岡
宇都さんや隅田さんの感じた問題意識は、私たち開発の側にも芽生えていました。私たちのモノづくりは、一般の人々にどこまで伝わっているのだろうか? 開発者の自己満足に終わっているのではないか?と。
例えば開発者が、必死に努力して車内空間を1cm広げ、車重を1kg軽くした。それは確かにすごいことかもしれません。が、一般の方々に「1cm広げました」なんて胸を張って叫んでも、一般の方々からすると「それがどうしたの?」という感じではないでしょうか。大事なのは、どんなクルマを作ろうとしたのか、お客様のカーライフをどれほど快適にしようとしているのか、という目的です。開発者はそういった目的を見据えた上で、クルマづくりにあたらなければいけない。目的を見失えば、1cm広げた、1kg軽くしたとどれほど成果を強調しても、全く無駄なのです。
そして開発後も、「自分たちの役目は終わった。後は勝手に売ってくれ」では意味がない。きちんとお客様にまで伝えないといけない。お客様に自分たちのクルマづくりを伝えよう。また営業の人々の話を聞くことで、お客様の志向を理解しよう。そんな考えのもと、共創会というプログラムが立ち上がったんです。
隅田
「作ったものを、営業にちゃんと伝えるまでが開発の責任だ」という開発者の言葉は、共創会の席で何度も聞きました。そこまでエンジニアがやるのなら、私たち営業も「お客様にきちんと伝えるのが営業の責任だ」と思うようになりました。
隅田
共創会で出る話はどれも刺激的です。例えばアテンザの共創会に参加した時は、受けた感銘があまりに大きく、翌日に自らアテンザを購入したほどでした。
松岡
それは知らなかったな。アテンザが生まれた理由は、「クルマってこんなに楽しいんだ、めちゃくちゃ爽快なんだ」ということを伝えるため、と言っても過言ではありません。カッコ良さと走りを存分に堪能してもらいたい…という思いを、細部に至るまで詰め込みました。開発者のそんな熱意が営業のみなさんに伝わったのだと思うと、嬉しいですね。隅田さんが感銘を受けたのは、どういった点ですか?
隅田
よく覚えているのは「クルマを試作するため、マツダはCADだけでなくクレイ(粘土)を多用します。クレイによって実際の質感、肌触りを極限まで追求するんです。クレイの消費量は、自動車メーカーの中で恐らく世界一です」という話です。CADだけで済ます方が楽なのに、わざわざ手間をかけ、クレイモデルを作る。それを0.01mmの精度で削り、アテンザの特徴である生命感のあるデザインを生み出しているのか、そりゃかっこ良くなるわけだ、と納得しましたよ。
このことは、必ずお客様にも話します。マツダのクルマは、熟練のモデラーが、魂を込めてクレイを削っているんですよ、と。ほら、こんなふうに、と、共創会で開発の方がやっていたのと同じように、身振り手振りもつけて。
宇都
フロントサスペンションの取付角度が納得できず、2000回も繰り返し見て角度を検証した、という話もありましたね。そこまでこだわっているのか、と。そんな話を聞くうち、「開発者はこんな熱いこだわりで生み出しているのに、私たちの意識が不足していてお客様にちゃんと伝わらない…なんてことがあったら嫌だな」と思うようになったんです。それで、アテンザの共創会後に私は早速、高級ボールペンを買いに行きました。
松岡
ボールペンを? どうしてです?
宇都
お客様に契約書のご記入を頂く際に、必ずペンが必要です。それまでは特に気にせず、おまけでもらったような安っぽいボールペンをお渡ししていました。しかし、そういったささいなことにも、自分たちの熱意を込めないといけない、と感じたんです。
隅田
マツダのクルマを語る上で欠かせない「人馬一体」という考え方についての話も興味深かったですね。自動車以前の時代、人々の主な移動手段は「馬車」だった。それから時を経て、多くの自動車メーカーは、「馬車」の代わりとして「自動車」を作り出した。
しかし、マツダは違う。「自動車」を、「馬車」ではなく「馬」だととらえている。それが「人馬一体」の示す意味なのだ、と。思想の出発点が、マツダと他メーカーでは違う。この話をお客様に伝えると「だからマツダのクルマはどれも個性的なんだね」と共感してくれます。
松岡
最近はハイブリッドや電気自動車、あるいはクルマを制御するITなど、機構やシステムをアピールするクルマが多いですよね。無論、それらを軽視するつもりはありません。しかし根本は、人とクルマがどう付き合うか、そこにどんなワクワクがあるか、でしょう。様々なテクノロジーは、そうした感動を実現する手段に過ぎません。そんなマツダの姿勢を表しているのが「人馬一体」というコンセプトなんです。
宇都
共創会に参加した営業スタッフは、自社に戻った後、学んだこと・感じたことを自社のメンバーに共有しています。そして、その思いをお客様に伝えるため、ディーラーとして何をすべきか、みんなで討議するんです。さながら社内での「ミニ共創会」といったところ。そうやって研鑽し合っています。
松岡
開発者もみんな「お客様と日々触れ合っている営業スタッフの話は、参考になることが多い」と言っていますよ。お客様をもっと知って、価値あるクルマを提供していこう、と。営業も開発者もお客様の方を向き、お客様のために力を合わせる。これこそ「One Mazda」ですよね。今後も積極的に情報共有・意見交換を行い、マツダにしか創造できない価値を提供していきましょう。